【10月8日 AFP】行政のトップを決める選挙制度に抗議して民主派の学生らがデモを続けている香港(Hong Kong)で、失うものはほとんどないと訴え活動する若い世代と、抗議よりもプラグマティズムを好む保守的な年配の世代との間の「見解の相違」が浮き彫りとなっている──。

 今回のデモは、警察当局が放つ催涙弾や催涙スプレーから身を守るために参加者らが傘を使ったことから、一部メディアからは「雨傘革命(Umbrella Revolution)」と呼ばれている。

 デモの参加者らは2017年の次期行政長官選挙で、候補者を(に)立てる権利と選ぶ権利の両方が認められるべきだと訴えているが、中国政府は、立候補できるのは占拠委員会から指名された候補者のみだとしている。

 それにしても、なぜこれだけ多くの若者がデモで主導的な役割を担っているのか。背景にあるのは民主的な選挙に対する要求だけではない。生活費の上昇や、本土の裕福な中国人との競争が、若者の間で将来への不安感を生み出していることもその原動力の一部となっている。

 10代の友人と共に9日間にわたって座り込みを続けているという中等教育校生のシャドー・ウーさん(16)は、政府は若い世代の未来など気に掛けていないと話す。そして祖父母からもデモへの参加については「時間の無駄」と思われていると述べた。「祖父母は困難な時代を生き抜いてきた。私たちのやっていることは愚かで、快適な生活を送れているのだから満足すべきというのが彼らの考えだ」

 経済成長の約束と引き換えに、個人の自由と政治的自由への願いが抑制されている中国本土の人々とは事情が異なり、香港の若者は上がる一方の生活費に日々悩まされている。香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)によると、8月の集合住宅50か所の平均家賃は過去最高となり、約27平方メートルの部屋の最低家賃は平均で月1030ドル(約11万円)だった。2013年の大卒の平均月給は1650ドル(約17万8000円)だ。

 グラフィック・デザイナーで親と同居するキャロル・ハンさん(30)はデモに参加する若い社会人の典型だ。ハンさんは、「これまでの世代は働けば安定した生活を送れたが、私たちはどんなに働いても、これと同じようにはならない。親の世代は生計を立てることが最も重要だったが、私たちの世代は大半が、教育の機会をより多く得ているし、考え方が異なる」と、デモに参加する理由を述べた。

 一方、本土での過酷な貧困や政治的迫害から免れ、子どもに良い暮らしをさせたい一心でこつこつと働いてきた「年上の世代」のなかには、デモを「過激」とみる人たちもいる。彼らには、自分たちの築いてきた社会を台無しにするために、若者らがわざわざ危険を冒しているように見えるのだという。(c)AFP/Jerome TAYLOR, Dennis CHONG