【10月8日 AFP】スペイン南部で発掘された古いガラス皿に、これまでで最古のイエス・キリスト(Jesus Christ)像の一つが刻まれているのを発見したと、発掘した考古学者らが発表した。その外見は、ひげをきれいに剃った短髪で、従来のイメージとは大きく異なっているという。

 発掘チームは、古代都市カストゥロ(Castulo)遺跡の3年に及ぶ発掘作業中にガラスの破片を多数発見した。そして7月には図柄の刻まれた大きめな破片がみつかり、注目が集まった。

 破片をつなぎ合わせると、それは紀元4世紀に作られた絵皿だった。この皿には、古代ローマの外衣「トーガ」を身につけ、きれいに身なりを整えたキリストの姿が刻まれていた。

 直径22センチの皿は、80%以上が再現され、キリスト教の儀式である聖餐(せいさん)に用いられる聖体のパンをのせるための皿「パテナ(聖皿)」であると特定された。

 発掘作業を率いたマルセロ・カストロ(Marcelo Castro)氏は、「非常に優れた考古学的資料」と出土した皿について評している。

 皿には後光を放つ3人の人物が刻まれていた。中央は十字架と聖書を持つキリストで、その横に立つ2人は使徒ペテロとパウロとみられる。

 専門家らによると、この皿に刻まれているキリストのあごひげのない顔と短い巻き毛の髪形は、歴史上でみられるキリスト像の特徴としては極めてまれだという。

 この特徴あるキリスト像が描かれた皿についてカストロ氏は、古代ローマ帝国のコンスタンティヌス(Constantine)大帝がキリスト教信仰を受け入れた直後の初期の教会時代の名残を伝えるものだと指摘する。

 キリスト教が公認される以前は、ローマ帝国の下で行われていた迫害を恐れ、礼拝は秘密裏に礼拝が行われ、また宗教的な肖像画などもほとんど作製されなかった。

 この聖皿に描かれた古代ローマ様式のキリスト像は、コンスタンティヌス後のキリスト教信仰の「初期に存在」したが「後に他の方法でキリストを描くのが好まれるようになり放棄された」とカストロ氏はAFPの取材に語った。

 発掘チームは、当時ガラス製品の製造が盛んに行われていたイタリア・オスティア(Ostia)で作られたものと考えているという。

 この皿は現在、スペイン南東部リナレス(Linares)の博物館に展示されている。(c)AFP