【10月7日 AFP】南アフリカ・ケープタウン(Cape Town)の裁判所で6日、同国を新婚旅行中に妻を殺害したとして、殺人などの罪に問われている英国人富豪、シュリーン・デワニ(Shrien Dewani)被告の公判が開かれ、被告は無罪を主張した上で、自身はバイセクシュアル(両性愛者)であり、金銭と引き換えに男娼と性交渉を持ったことがあると認めた。検察側は、被告が見合い結婚でやむなく一緒になった妻の殺害を殺し屋に依頼した同性愛者だと主張する可能性があり、被告の主張はこれに対する先制攻撃とみられる。

 事件では2010年11月13日、デワニ被告のスウェーデン出身の妻アニ(Anni Dewani)さん(当時28)が射殺された。被告は当時の状況について、ケープタウンの貧困地区ググレツ(Gugulethu)で乗っていたタクシーが、銃を持った男2人に乗っ取られたと主張している。デワニ被告は無傷で解放されたが、アニさんは翌日、乗り捨てられたタクシーから遺体で見つかった。

 6日の公判で読み上げられた供述書で、デワニ被告は殺人、誘拐および司法妨害について無罪を主張。自身はバイセクシュアルだが、アニさんには「すぐに肉体的な魅力を感じ」愛するようになったと述べた。

 事件後に英国に帰国したデワニ被告は、うつ病や心的外傷後ストレス障害といった精神衛生上の問題を理由に、3年間にわたって南アフリカへの送還拒否を求める法廷闘争を続けていた。だが被告は裁判に耐えうると判断され、4月に南アフリカに送還されていた。

 事件ではこれまでに南アフリカ人3人が有罪となり、禁錮18年~終身刑が言い渡されている。禁錮18年が言い渡されたタクシー運転手のゾラ・トンゴ(Zola Tongo)受刑者は、司法取引に応じ、1万5000ランド(約14万5000円)の報酬でデワニ被告からアニさんの殺害を請け負ったことを認めており、検察側の重要な証人となる見通しだ。

 また別の重要な証人として、デワニ被告に金で買われたと話しているサドマゾヒズム(SM)の「主人役」が出廷する可能性が高い。この証人は男性を客にとる男娼で、デワニ被告が「愛らしい女性」と結婚することになったが「(結婚から)逃げ出す方法を見つける」必要があると話していた、と英警察に供述したとされる。(c)AFP/Lawrence BARTLETT