【10月3日 AFP】米カジュアルウエアブランド「アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)」が頭髪を覆い隠すスカーフの着用を理由にイスラム教徒の女性を雇用しなかったのは差別かどうかが争われている訴訟で、米連邦最高裁は2日、上告を受理した。来年1月に口頭弁論を行い、9人の判事が6月に判断を下す見通し。

 この訴訟は2008年、サマンサ・エラウフ(Samantha Elauf)さん(当時17)が、「ヒジャブ」を着用しているのはアバクロンビー&フィッチの「外見規定」違反だとして、米オクラホマ(Oklahoma)州タルサ(Tulsa)の同ブランド店舗から採用を断られたのは雇用差別だとするもの。

 米連邦地裁はアバクロンビー&フィッチによる差別があったと認定したが、第10巡回控訴裁判所(高裁)は、1964年の公民権法で保護対象となるのは「宗教上の便宜供与が必要なことを明確に通知」した従業員に限られると判断。これを受けて、米雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity CommissionEEOC)が連邦最高裁に上告申し立てを行っていた。

 公民権法では、雇用主が事業に不利益をもたらさずに被雇用者の信仰に便宜を供与できない場合を除き、信仰する宗教を理由に雇用を拒否することを禁じている。

 裁判資料によるとエラウフさんは、同社の子供服ブランド「アバクロンビーキッズ(Abercrombie Kids)」の求人に応募した際、信仰に基づく服装で勤務できるよう「外見規定」を緩和できるかどうかについて質問はしなかった。また、面接ではヒジャブを着用しないよう忠告され、アバクロンビー&フィッチの美意識に合致した服を着るよう勧められたという。

「エラウフさんは面接の前から、応募した仕事がアバクロンビースタイルの『モデル』となることを求められると知っていた。アバクロンビーが販売する衣服がどんなものかも、アバクロンビーではヒジャブを扱っていないことも知っていた」と、会社側は主張している。

 10代を中心に高い人気を誇るアバクロンビー&フィッチは、すらりとした肉体美の販売員が店舗入り口で客を案内したり、ローライズ・ジーンズや胸元の大きく空いた服、着丈が短く腹部があらわになってしまうシャツやミニスカートなどを着用したりすることで知られる。(c)AFP