【10月2日 AFP】高齢者における嗅覚機能の低下は、以降5年間に死亡する可能性を高い確率で示唆する「前兆」であるとした研究論文が、1日の米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)に掲載された。

 研究論文は「全米社会生活健康加齢プロジェクト(National Social Life, Health and Aging ProjectNSHAP」の一環として行われた初の在宅調査の結果を基にしたもので、この調査を通じて年齢57~85歳の調査対象者のうち、嗅覚に関する簡単なテストで正確に答えることができなかった人の39%が、その後の5年以内に死亡していたことが判明している。また、嗅覚機能に軽度の低下が認められた人と健全な状態と判断された人のうち同じ期間内に死亡した人はそれぞれ、19%、10%だったという。

 研究者らによると、嗅覚機能の低下は心不全やがん、肺病の診断よりも明確に死期を予測するとされ、これを上回るのは、重度の肝臓障害のみだという。

 論文の主執筆者である米シカゴ大学(University of Chicago)医学部外科のジャヤン・ピント(Jayant Pinto)准教授は、「嗅覚機能の低下は(危険が迫っていることを知らせてくれる)『炭鉱のカナリア』のようなものと考えている。直接の死因とはならないが、体内に何らかの大きな異常が発生したことを表すサインだ」と説明している。

 同准教授は、今回の研究結果は最も危険な状態にある患者を特定するための迅速かつ安価な臨床検査方法として有用となる可能性があるとしている。

 ただ嗅覚機能の低下と死亡の明確な関連性は、今のところ明らかになっていない。(c)AFP