月面の「嵐の大洋」、溶岩流出で形成 米研究
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【10月2日 AFP】地球から見える月面の「餅つきウサギ(訳注:欧米では「月の男」)」模様の暗い部分にあたる月の盆地は、小惑星の衝突ではなく、溶岩の流出によって形成されたとの研究論文が1日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。
昔の天体観測者らが「嵐の大洋」と呼んだ広大な盆地は、その直径が3000キロ近くある。これまでの主要な学説では、この盆地は月の形成初期段階に、月面に巨大な隕石(いんせき)が衝突してできたとされていた。
だが、米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、MIT)などの研究チームが行った今回の研究は、月の表側の約5分の1に広がるこの「染み」について、火山流出物によって形成されたとする証拠を提供している。
論文によると、米航空宇宙局(NASA)の月探査ミッションで得られたデータを分析した結果、研究チームはかつての「マグマ供給系」だったとみられる太古の地溝の名残を月の地殻に発見したという。
30~40億年前、このマグマ供給系からあふれ出た溶岩は地域一帯を覆い尽くした。その後溶岩は固まり、現在の特徴的な黒い模様として見える玄武岩が形成された。
この地溝の存在については、2012年の月探査ミッション「グレイル(Gravity Recovery and Interior Laboratory、GRAIL)」で明らかにされた。
同ミッションでは、2機の探査機が互いを追跡しながら月を周回飛行した。先導する探査機が地殻の厚い部分や薄い部分の上空を通過すると、探査機に及ぼされる重力が変化するため、先導機とそれを追跡している探査機との間の距離にわずかな差異が生じる。この探査機間の微小な「アコーディオン」運動を測定することにより、科学者らは月の地殻の差異をマッピングすることができた。
このマッピングの調査を通じて、嵐の大洋の辺縁部が、角度約120度の多角形の形状となっていることが判明した。研究チームは、冷えて結晶化した溶融物質による収縮の痕跡と考えられるとし、小惑星の衝突では、円形や楕円(だえん)形のクレーターが形成されたはずと結論付けた。
しかし、MITのマリア・ズーバー(Maria Zuber)教授(地球物理学)は、溶岩の噴出がなぜ起きたのかは分からないとし、「月の深部で、熱を発生する元素の放射性崩壊が起きたか、あるいは非常に初期の段階で発生した大規模な衝突によって溶岩噴出が誘発されたとも考えられる。だが後者の場合、そのような衝突の証拠はすべて跡形もなく消し去られている」と述べている。(c)AFP