【9月30日 AFP】イラクで勢力を拡大するイスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が歴史的な遺跡を破壊し、価値ある遺物を略奪しては闇市場で売りさばいていると29日、仏パリ(Paris)の国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)本部に集まった考古学専門家らが警告した。

「イスラム国」はモスル(Mosul)やティクリート(Tikrit)など支配下に置いた地域で、神殿や教会、貴重な写本などを破壊し、遺跡を盗掘しては出土品を国外に売りさばいているという。こうした「イスラム国」の破壊行為を、ユネスコのイリナ・ボコバ(Irina Bokova)事務局長は「カルチュラル・クレンジング(文化浄化)」だと称した。

 例えば「イスラム国」は7月にイラク第2の都市モスルで、イスラム教徒とキリスト教徒の双方が崇拝する預言者ヨナ(Jonah)の墓があるナビ・ユヌス(Nabi Yunus)聖廟を爆破し破壊した。イスラム教の教義を厳格かつ残忍に解釈した過激思想を持つ「イスラム国」は、墓所への参拝を偶像崇拝とみなしている。

 またイラク国立博物館のカイス・ラシド(Qais Rashid)館長によれば、「イスラム国」は宗教施設や聖地から1500点を超える写本を寄せ集め、モスル市の中心にある広場で燃やしてもいるという。

 ラシド氏は「アッシリア時代の銘板が盗まれ、欧州の都市で突然、見つかったりしている。国際的な犯罪組織がいて、何が売れるかをISに教えている」と述べ、そうした遺物の密売が「テロリズムの資金源になっている」と警鐘を鳴らした。(c)AFP