ニック・ケイブの半生と今、そして映画『20,000 Days on Earth』
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【9月24日 AFP】オーストラリア出身のシンガー・ソングライター、ニック・ケイブ(Nick Cave)は40年を超えるキャリアの中で、率直で強烈な歌を通し神と性的欲望の本質を探り続けてきた。
自らをフィーチャーした映画『20,000 Days on Earth』(地球上で2万日)が米国で公開された20日、ケイブは故郷の町について語った。1980年にオーストラリアを離れたものの「いまだ何にでもインスピレーションを受けている」というケイブの故郷は豪南東部ビクトリア(Victoria)州のワンガラッタ(Wangaratta)、現在人口1万7000人の町だ。
「僕の歌に出てくる情景は確実に(故郷の)大きな影響を受けている。1本の川とあとは草むらや空き地しかない小さな町という着想は、常にあのひどい町での暮らしから来ている。たまらなく粗野な警官隊がいて皆の生活を散々にしていたから、育つにも大変な場所だった」
後にその暗いサウンドがゴス・シーンの前触れとなるパンク・バンド「バースデー・パーティー(Birthday Party)」を引き連れ、ケイブは豪メルボルン(Melbourne)から英ロンドン(London)へ活動の拠点を移した。バースデー・パーティーのギグは荒れることで悪名高かった。今回の映画でも観客の1人が、ベーシストのトレーシー・ピュー(Tracy Pew)に向かって放尿するシーンが登場する。豪州出身だということでロンドンでは最初、歓迎されなかったのだとケイブはいう。その後、西ドイツ時代の西ベルリン(West Berlin)に移り、アーティストとして成長する自由を得たと話す。
ケイブはさらに実験的になり、米国のブルース音楽の要素をその後のバンド「ニック・ケイブ・アンド・ザ・バッド・シーズ(Nick Cave and The Bad Seeds)」の暗い曲調に組み込んだ。このバンドの代表曲「ザ・マーシー・シート(The Mercy Seat)」は電気椅子が待っている死刑囚について、聖書を豊富に引用して語った物語だ。
ケイブの歌は宗教的な暗示に満ちているにもかかわらず、「神という概念と自分とは奇妙な関係にある」とケイブは語る。「作曲するときには、ある種のそういうものが存在している。誰かが曲を書いている、みたいなね。でも実世界ではそんなものは信じていない。宗教に本当に興味を持ったことがあるのは、ドラッグを大量にやったときだ」