【9月9日 AFP】フランスの首都パリ(Paris)の街角を案内してもらうなら、そこに住む人に頼むのが一番かもしれない──文字通り、路上で生活をしている人たちに。

 約半年前からツアーガイドとして働いている路上生活者のバンサンさん(39)は、ガイドブックに載っていない小道や路地に観光客を案内しては、その通りにまつわる過去と現在の物語を話して聞かせている。

 あいにくの雨にもかかわらず、オーストラリアやオランダ、台湾などから来た観光客たちは、石畳の小路を巡る約2時間のツアーでバンサンさんが話す19世紀に起きた革命についての逸話に夢中で聞き入っていた。「本当のパリを発見しているよ」と、一人で世界一周の旅をしているメキシコ人、マルコさん(28)は感想を述べた。「友達もできるし、楽しい。パーフェクトだね」

 このツアーは昨年、ベンチャー企業「アルテルナティブ・ユルベンヌ(Alternative Urbaine)」が立ち上げたものだ。社員4人の同社は「観光は社会に良い影響をもたらさなければならない」とのモットーを掲げ、ホームレスの社会復帰支援を使命としている。

 パリ市都市計画局(Paris Urban Planning Agency)によれば、2001年以降、パリ市内のホームレスの数は84%増加し、2012年には2万8000人を超えた。女性や家族全員がホームレス化する例が急増するなか、保護施設(シェルター)や緊急一時宿泊所の受け入れキャパシティーも限界に近い状態になっているという。

 もともとは会計士だったバンサンさんは、うつ病がきっかけとなり路上生活をするに至った。2月に一時宿泊施設内の職業あっせん所でアルテルナティブ・ユルベンヌの求人広告を見つけ応募したところ、「面接を無事に通り、雇われた」という。