【9月5日 AFP】イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)の元指揮官で、重鎮でもあるアレックス・ファーガソン(Alex Ferguson)氏が4日、サッカー界では確かに資金力が物を言うが、それでも今夏の移籍市場に投じられた金額には驚いたと明かした。

 2日前に発表された調査結果によれば、欧州のトップリーグではこの夏、移籍金が16パーセントも上昇し、ファーガソン氏も関わるユナイテッドがアンヘル・ファビアン・ディ・マリア(Angel Fabian Di Maria)獲得に費やした移籍金は、相場をはるかに上回っているという。

 欧州サッカー連盟(UEFA)の本部で行われたトップレベルの監督が集まる会合に参加したファーガソン氏は、マネーゲームもサッカーの一部だと話した。

「私の個人的な意見だが、この傾向は今後も変わらない。世界は進歩しており、それと同時に移籍金も動く。この流れに終わりがあるかは分からない」

 2013年5月に26年以上率いたユナイテッドの監督を退任した72歳のファーガソン氏は、「幸運なことに、今の私はその中心にいるわけではない。もちろん驚いているよ。使われた額にはね」と話した。

 ユナイテッドは、ファーガソン氏の後を継いだデビッド・モイーズ(David Moyes)前監督が、低迷を理由にわずか10か月で解任されると、FCバルセロナ(FC Barcelona)やバイエルン・ミュンヘン(Bayern Munich)で指揮を執った実績を持ち、W杯ブラジル大会(2014 World Cup)ではオランダ代表を3位に導いたルイス・ファン・ハール(Louis van Gaal)監督をこのオフに招へいした。

 すると、リーグ7位という失意のシーズンから巻き返したい優勝20回を誇る名門ユナイテッドは、ファン・ハール監督に対し、資金をぜいたくに使って大物を次々と獲得するお墨付きを与えた。

 ユナイテッドは先週、5970万ポンド(約103億円)をつぎ込んでスペイン1部リーグのレアル・マドリード(Real Madrid)からディ・マリアを獲得し、英国の移籍金記録を塗り替えた。

 さらに移籍期限の最終日には、ラダメル・ファルカオ・ガルシア(Radamel Falcao Garcia)をASモナコ(AS Monaco)から期限付きで、アヤックス(Ajax)からオランダ代表のデリー・ブリント(Daley Blind)を獲得するという派手な動きをみせた。

 そのうち、1400万ポンド(約24億3000万円)を投じたブリントの移籍は既定路線だったものの、点取り屋のファルカオと契約したのは大きな驚きだった。

 報道によれば、ユナイテッドは、ファルカオを1シーズン確保するために年俸1000万ユーロ(約13億7000万円)の契約を結び、これに5500万ユーロ(約75億3000万円)での買い取りのオプションを付けたとされている。

 ユナイテッドが今夏の選手獲得に費やした資金は、合計1億5000万ポンド(約260億円)前後に上る。

 ところが、スイスに拠点を置くアナリストグループ、CIESフットボール・オブザーバトリー(CIES Football Observatory)は、移籍金の危険な高騰に経済そのものの成長はまったく追いついておらず、ディ・マリアの件はそれを示す典型例だと述べている。

 CIESによれば、アルゼンチン代表であるディ・マリアの適正な価格は、3000万ユーロ(約41億円)ほどだという。

 同じことは、パリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)がDFとしては世界最高額の6200万ユーロ(約84億円)で獲得したダビド・ルイス(David Luiz)にも言えるとしており、こちらは2900万ユーロ(40億円)高すぎるという。

 レアルが8000万ユーロ(約109億円)でモナコから獲得したW杯得点王ハメス・ロドリゲス(James Rodriguez)も、相場を2500万ユーロ(約35億円)もオーバーしている。

 CIESは、これらは富裕なクラブが招いた移籍金高騰を象徴する事例であり、欧州全体では、選手の能力がそう変わったわけではないにもかかわらず、移籍金が過去5年と比べて平均16パーセント上がったと述べている。

 CIESが今回行った調査は、イングランド・プレミアリーグ、スペイン1部リーグ、イタリア・セリエA、ドイツ・ブンデスリーガ1部、フランス・リーグ1の「5大リーグ」を対象としている。(c)AFP