デング熱、遺伝子組み換え蚊で対抗 生態系破壊懸念も ブラジル
このニュースをシェア
【9月2日 AFP】ブラジル南東部サンパウロ(Sao Paulo)州カンピーナス(Campinas)にある英バイオテクノロジー企業「オキシテック(Oxitec)」の研究所では、高温多湿の環境下で「ある物」が作られている──デング熱対策のための遺伝子組み換え(GM)蚊だ。
オキシテックは、デングウイルス感染の拡大を食い止めるため、ウイルスを媒介する「ネッタイシマカ(学名:Aedes aegypti)」の遺伝子を操作している。7月にサンパウロ(Sao Paulo)州カンピナス(Campinas)に開設されたばかりのこの研究所で行われているのは、世界初となるGM蚊の「生産」だ。
「OX513A」と呼ばれるオスのネッタイシマカには、自然界のメスと交尾して生まれてくる幼虫が、成虫になる前に死ぬよう遺伝子が操作されているため、その繁殖を押さえることができるという。
オキシテックは、十分な数のGM蚊が自然界に放たれれば、広範囲で交尾が行われ、ネッタイシマカの数を大幅に減少、もしくは絶滅に追いやることもできるとしている。
ブラジル当局はGM蚊の販売をまだ承認していない。さらに、遺伝子操作に懐疑的な専門家からは、GM蚊を放出することで、生態系に悪影響が及ぶ可能性があると危惧する声も聞かれる。
これらの心配をよそに、オキシテックで研究を進める生物学者のソフィア・ピント(Sofia Pinto)氏は、ネッタイシマカがアフリカ原産の蚊で、ブラジルに入ってきたのは近代になってからと説明。「主に都市部に生息する蚊で、訪花して受粉する訳でもなく、またある生物にとっての特定の餌になっている訳でもない。死滅させても大きな影響はない」と反論している。
GM蚊は2002年に開発され、これまでにケイマン諸島(Cayman Islands)や米国、マレーシア、ブラジル・バイア(Bahia)州で試験的に使われたことがあるが、現在進められているブラジルでの試みは過去最大規模。商業目的での販売も承認される可能性があり、同社は、デング熱対策最前線にある同国の地方自治体を販売のターゲットに定めているという。
ブラジルでは今年に入ってから、65万9051人がデング熱に感染、死者は249人となり、世界で最も深刻な被害を受けている。デング熱に感染すると、発熱や頭痛、筋肉や関節の痛み、吐き気、発疹など、重いインフルエンザに似た症状が出る。治療法はなく、時に出血やショック状態、さらには死に至ることもある。(c)AFP/Natalia RAMOS