大腸菌と糖からプロパン、将来の持続可能エネルギーに期待 研究
このニュースをシェア
【9月3日 AFP】化石燃料に代わる豊富で無公害な代替エネルギーの実現を目指し、糖と腸内バクテリアの大腸菌(E.coli)を用いてプロパンを生産する方法を開発したとの研究論文が、2日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。
商業的に実現可能な段階にはないが、既存の技術でもスムーズに導入・利用できる持続可能で無公害な再生可能エネルギーが、この方法で生産できる日が来ることに開発者らは期待を寄せている。
プロパンは、ヒーター、ガスコンロ、冷蔵庫、一部の自動車などで使用される液化石油ガス(LPG)の主成分の一つ。天然ガスの処理やガソリン精製の過程で副産物として得られるが、天然ガスや石油はどちらも有限資源だ。
これまで、プロパンを再生可能な燃料源から製造する方法は存在していなかった。
代替エネルギー源として挙げられるプロパンは、通常の放出は気体で行われるが、貯蔵はエネルギー密度の高い液体の状態で行うことが可能だ。また他の燃料に比べて毒性が低いといった利点もあると論文の執筆者らは記している。
論文の共同執筆者の一人、英ロンドン大学インペリアルカレッジ(Imperial College London)のパトリック・ジョーンズ(Patrik Jones)氏は、「今回の概念実証研究は、これまで化石燃料からしか得られなかった燃料の持続可能な生産を可能にする方法をもたらすものだ」と語る。
「今までのところ少量しか生産できていないが、生産された燃料はそのまますぐにエンジンで使用できる状態にある」
■バイオ燃料の段階的廃止へ
研究チームは、遺伝子組み換え大腸菌を糖で培養する実験を行った。大腸菌は、通常は無害な腸内バクテリアだが食中毒を起こす場合もある。
通常の大腸菌の細胞内では、糖の一部が脂肪酸分子とタンパク質分子に変えられ、これらの分子で新たな細胞膜が作られる。
だが遺伝子組み換え大腸菌では、脂肪酸を作るプロセスが阻害され、代わりに「酪酸」と呼ばれる不快臭を持つ化合物が生成される。
生成された酪酸は、数種類の酵素を添加することでプロパンに変化する。
「水圧破砕法(フラッキング)により、液体および気体の化石燃料の供給量は増加しているが、長期的には『真』の持続可能エネルギー技術がまだまだ必要とされている」と論文の執筆者らは記している。
研究チームは、トウモロコシなどの一部のバイオ燃料作物に対する批判にも触れ、「農作物を原料とする現在のバイオ燃料を段階的に廃止し、食糧需要と競合しない次世代技術に移行する必要性」を指摘している。
「今後5年~10年以内には、われわれのエネルギー需要に対して燃料を持続的に供給する、商業的に実現可能な方法に到達できることを期待している」とジョーンズ氏は話している。(c)AFP