声を上げる場失う中国のDV被害者たち、支援団体解散し孤立
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【9月28日 AFP】結婚して1か月が過ぎたころ、夫の暴力が始まった――中国人のマー・シュユンさんは語り始めた。叩く、蹴る、突き飛ばすなどの暴行が2年以上続き、生まれたばかりの娘も標的となった。夫は、息子を欲しがっていた。
ある日の深夜、マーさんは北京(Beijing)の警察署に助けを求めた。夫が、義理の母と一緒に、彼女を布団です巻きにして上に座り、気が遠くなるまで窒息させたからだ。
ところが、事件後に警察が身柄を拘束したのは夫ではなく、妹を助けようと駆けつけて夫を撃退してくれたマーさんの兄のほうだった。「警察は、夫を逮捕しなかった。私のけがなど、大したことはないと思ったんでしょう」とマーさん。「ただの夫婦げんかだとみなされたんです」
マーさんの夫は現在、離婚を望んでおり、娘の親権と養育費として月1500元(約2万7000円)の支払いをマーさんに要求している。
人民法院(裁判所)は、マーさんが夫を相手取って起こした訴訟を証拠不十分で却下した。兄は8か月にわたって刑務所に収監されたままだ。
■DV防止法なく、支援網も解散
こうした話は中国ではありふれていると、北京紅楓女性心理カウンセリングセンター(Maple Women's Psychological Counselling Center Beijing)の侯志明(Hou Zhiming)主任は指摘する。
女性の権利向上を目指して長年活動し、マーさんの代理人も務める侯主任によれば、中国のでは4家族につき1件の割合で家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス、DV)が発生しているとみられる。しかし、当局は「プライベートな問題」だとして介入したがらないという。
北京で「国連世界女性会議(World Conference on Women)」(北京女性会議)が開催され、男女平等と女性の権利向上に各国政府が取り組むことを約束した「北京宣言」と「北京行動綱領」(Beijing Declaration and Platform for Action)が採択されたのは、20年近く前のこと。だが、中国国内ではいまだDV防止法が整備されていない。
それどころか、中国で初めてDV問題に取り組み、規模も同国最大だったNPO連合組織「反家庭内暴力ネットワーク(Anti-Domestic Violence Network、ADVN)」は今年4月、突然の解散を発表した。北京紅楓女性心理カウンセリングセンターも、ADVN加盟72団体の1つだった。
「ADVN解散は、弊害をもたらすだろう。DV反対を訴える専門的な活動を全国規模で展開する上では、当然ながら影響力が強いほど良いのだから」と侯主任は話した。