異業種から医療分野へ ─ エボラ薬開発の富士フイルムにみる大企業の成長戦略
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【9月2日 AFP】日本政府が、西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱の治療に役立つ可能性のある新薬を提供する用意があると発表した時、その発表内容には一つの聞き慣れない点があった──薬の製造元が、カメラや証明用写真ボックスで知られる富士フイルム(Fujifilm)であるということだ。
この新薬は、富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業(Toyama Chemical)が開発した「アビガン(Avigan)」(一般名ファビピラビル)。国内でインフルエンザ治療薬としての製造販売承認を取得済みだが、エボラ出血熱にも効果があるとの期待が寄せられている。
富士フイルムの古森重隆(Shigetaka Komori)最高経営責任者(CEO)は同社のウェブサイトで、X線画像診断システムや医療ITシステム、化粧品、サプリメントや医薬品の開発によって「『予防』『診断』『治療』の領域をトータルにカバーする総合ヘルスケア事業」を成長させていくと述べている。
異業種から医療分野に事業を拡大しているのは富士フイルムだけではない。ソニー(Sony)やパナソニック(Panasonic)、東芝(Toshiba)などの大手企業でも同様の動きがみられる。こうした傾向の背景には、厳しい価格競争や縮小する国内市場に加え、世界の市場で優位に立つことが困難になった現状がある。
ソニーはこれまで培ってきたブルーレイディスク技術を、がんなどの研究に使われる細胞分析装置の設計に応用した。
パナソニックは病院内で薬剤などを自動で搬送するロボット「HOSPI」の販売を開始。同社は2年間で計150億ドル(約1兆5000億円)の巨額損出を出したが、現在は不安定ながらも回復しつつある。
一方の東芝は他社の一歩先を行き、企業立病院「東芝病院」を東京に設立。院内の機器はほぼすべて自社製だ。