4000年間孤立していた民族「パレオ・エスキモー」
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【8月29日 AFP】「パレオ・エスキモー(Paleo-Eskimo)」として知られる、約700年前に消滅した古代の民族集団は、北米の北極圏で4000年以上にわたり孤立した状態で生活していたとの研究論文が、28日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。
シベリア(Siberia)からベーリング海峡(Bering Strait)を横断して、新たな生活の地に移動してきたパレオ・エスキモーは、歴史上の異なる時期に同じ道のりをたどって来たアメリカ先住民やイヌイット(Inuit)などの他の文化の人々とは全く接触しなかった。
デンマーク自然史博物館(Natural History Museum of Denmark)などの研究チームが発表した論文によると、今から約700年前、現代のイヌイットの祖先がアラスカ(Alaska)から東へ移動したのとほぼ同時期に、パレオ・エスキモーはついに姿を消してしまったのだという。
米スミソニアン協会国立自然史博物館(Smithsonian Institution National Museum of Natural History)北極研究センター(Arctic Study Center)のウィリアム・フィッツヒュー(William Fitzhugh)所長は「彼らはある意味、無防備な標的だった。北極地域の周辺に追いやられ、そこで生き残ることができなくなったか、もしくは単に、何らかの未知の方法で滅ぼされたのかもしれない」と語る。
研究チームは今回の研究で、北極圏のシベリア、アラスカ、カナダ、グリーンランド(Greenland)で収集された古い人の骨、歯、毛髪のサンプルからDNAを採取した。
さらに研究チームは、現代のグリーンランドに住むイヌイット2人、シベリアのニヴフ(Nivkh)人2人、北太平洋のアリューシャン列島(Aleutian Islands)の島民1人、アサバスカ(Athabasca)アメリカ先住民2人のゲノム(全遺伝情報)を解読した。
これらの遺伝的特徴を分析した結果、パレオ・エスキモーは、アメリカ先住民やイヌイットとは遺伝的なつながりはないことが分かった。