【8月27日 AFP】東西冷戦時代に米国人のローゼンバーグ夫妻(Julius and Ethel Rosenberg)が原爆製造に関する機密情報をソ連に渡したとして処刑されたスパイ事件「ローゼンバーグ事件」に関与したとして、1950年に有罪判決を受けた98歳の米国人女性が新たな証拠を示し、判決の撤回を求めている。

 訴えているのは、ローゼンバーグ事件の裁判に関連する司法妨害を共謀したとして1950年に有罪判決を下され、獄中で2年を過ごしたミリアム・モスコウィッツ(Miriam Moskowitz)さん(98)。モスコウィッツさんは25日、弁護士を伴い、ニューヨーク(New York)連邦地裁に申し立てを行った。

 ガイ・エドン(Guy Eddon)弁護士は「今回の申し立てにより、裁判所はマッカーシー時代の誤審を正す機会を得たのであり、その犠牲者で存命しているおそらく最後の1人がモスコウィッツさんだ」と述べた。

 マッカーシズム(赤狩り)とはジョセフ・マッカーシー(Joseph McCarth)上院議員の名を取って名付けられた、1940年代後半から50年代にかけて行われた反共活動で、多くの市民が証拠なしに国家反逆や国家転覆の疑いをかけられた。

 モスコウィッツさんは当時、他の被告2人と共に大陪審への偽証を共謀したとして有罪判決を受けたが、最初はモスコウィッツさんの非関与を供述していたハリー・ゴールド(Harry Gold)という人物が、死刑の可能性をちらつかせられ裁判での証言を変えた。エドン弁護士によると、新たな証拠は判決が「根本的に誤っていた」ことを示すという。

 この政府記録は、ゴールド元受刑者の証言の矛盾を含み、モスコウィッツさんの「無罪を証明する」ものだったが、弁護団の目には約60年間触れることがなく、2008年になってようやく機密解除され明らかになったという。(c)AFP