【8月27日 AFP】米国の環境保護団体と健康推進団体は26日、北米大陸に生息し、越冬の大移動で知られるチョウ、オオカバマダラ(学名:Danaus plexippus)の個体数がこの20年間で約90%減少しているとして、絶滅危惧種への指定および早急な保護を訴える嘆願書を連名で発表した。

 米生物多様性センター(Center for Biological DiversityCBD)と米食品安全センター(Center for Food SafetyCFS)が米魚類野生生物局(U.S. Fish and Wildlife ServiceFWS)に提出した嘆願書によると、個体数の減少は、遺伝子組み換えのトウモロコシや大豆に散布される除草剤により、チョウが卵を産み付けて、その幼虫が餌とする植物のトウワタが激減していることに起因しているという。

 特徴的なオレンジと黒の羽を持つオオカバマダラの急速な減少の主な要因としては、この他にも寄生虫、気候変動、自然の生息地の減少などが挙げられている。

 オオカバマダラの研究者で、自然保護論者のリンカーン・ブローワー(Lincoln Brower)氏は「オオカバマダラは、個体数が極めて急速な減少傾向を示している。直面している脅威の規模が非常に大きいため、すぐにでも『絶滅の危機に瀕(ひん)する種の保存に関する法律(Endangered Species Act)』による保護が必要だ。主な生息地の深刻な減少を反転させる時間はまだある」と話す。

 オオカバマダラは、米国全土およびカナダとメキシコの一部地域に生息している。

 今回の嘆願書によると、オオカバマダラの生息地は過去20年間で、米テキサス(Texas)州の面積にほぼ相当する67万平方キロ以上が失われたという。この中には、夏季の繁殖地の3分の1近くが含まれている。

 CBDとCFSの2団体が発表した声明は「絶滅危惧種の候補に加えられることで、オオカバマダラを故意に殺したり、生息地を許可なく改変したりすることが違法になる」と説明。また「絶滅危惧種の候補になることは、十分な個体数を取り戻すことを助けるための『重要生息地』の指定とその保護につながる」としている。

 同2団体によると、オオカバマダラの正確な個体数は不明であり、その数はその年ごとに変動するという。

「それでも19世紀には、オオカバマダラの個体数が非常に豊富であったことを示す事例証拠がある。ミシシッピ(Mississippi)川流域でのオオカバマダラの移動に関する1850年代の観察報告によると、その数が非常に多かったため、飛行する大群で空が暗くなるほどだったとされる」と同声明は指摘し、さらに「米カリフォルニア(California)州の初期の報告では、寄り集まったオオカバマダラの重みで木々の枝が折れたともある」と付け加えている。

 同2団体によると、過去20年にわたる調査は「90%近くの急速かつ統計的に重大な個体数減少」を示唆しているという。

 次の段階では、連邦政府による保護が正当であることを示すのに十分な情報が嘆願書に含まれているかどうかを確認するために、嘆願書に関する「90日間の調査所見」がFWSより発表される。

 この所見が発表されると、次はオオカバマダラが絶滅危惧種リストに追加されるべきかどうかに関してさらなる情報を収集するための1年間の状況調査がFWSにより行われる。(c)AFP