【8月25日 AFP】 中国で物理を学ぶジミー・ワンさん(31)は、飛行機になんてまったく興味がなかった。父親のワン・リジュンさん(58)が搭乗したマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH370便が、3月8日に消息を絶つまでは──。

 ワンさんは今は毎晩、MH370便と同じボーイング(Boeing)777型機の技術仕様に関する情報を求め、航空関連のブログをいくつも綿密にチェックしている。MH370便の失踪で同じように家族を失った人たちと情報交換をするためだ。

 ワンさんをはじめとする何百人もが、MH370便に乗っていた愛する家族の運命を知るために、国境を越えて悲しみを分かち合い、ソーシャルメディアで情報提供を呼び掛けている。しかし、航空業界最大のミステリーとも呼ばれるMH370便失踪の謎が解明されないことに、家族たちの怒りは募るばかりだ。

「マレーシア航空や他の関係各所は仕事をしていない、だから私たちが組織しなければならない」と、ワンさんはいう。彼はスウェーデンの大学院での研究を捨て、悲しむ母親のそばにいるために実家の中国河南(Henan)省安陽(Anyang)県に戻って来た。「謎が解けないまま、これからの人生を生きていくなんてできない」という。

 中国のマイクロブログ「新浪微博(SinaWeibo)」や米SNSのフェイスブック(Facebook)、米インターネット電話サービスのスカイプ(Skype)などを通じて、乗客の家族たちは情報交換したり仮説を話し合ったり、当局への提案を考えたりしている。「ボイス370(Voice370)」を名乗るグループのメンバーは約300人。航空や法律などの専門家から助言を受けたり、討論を行ったりしている。2009年のエールフランス(Air France)機墜落事故の際にも同様のグループが組織された。

 直接顔を合わせたミーティングが行われることもあるが、たいていのやりとりはウェブカメラや電子メールを通じてだ。マレーシア航空や捜索に関わる各国政府にさらなる情報公開を求め圧力をかける戦略について投票も行う。そのために、メンバーたちは時差や言葉の壁を乗り越え、「ミーティング」は主に英語で行われ、中国語の通訳もつく。

「すごいコミュニティー」だと、米国人のサラ・バジェクさんはいう。パートナーのフィリップ・ウッドさんがMH370便に乗っていた。「フィリップを捜すために、すべての力を出し切ろうと思っている。彼らのために、私たちはそうしないといけない」という。