【8月22日 AFP】最近15年間に地球表面の温暖化が減速しているように思われるのは、大西洋と南極海の深海に熱が閉じ込められていることが原因かもしれないとの研究論文が、21日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 このようなサイクルは20~35年続く傾向があり、熱が表層水に戻れば再び温暖化が加速する可能性が高いことを今回の研究結果は示唆している。

 論文の共同執筆者の一人、米ワシントン大学(University of Washington)のカーキツ・トン(Ka-Kit Tung)教授(応用数学)・非常勤教授(大気科学)は「温暖化の中断に関しては、毎週のように新たな解釈が提示されている」と語る。

「われわれはその根本にある原因を探るため、海洋で得られた観測結果を調べた」

 同教授と中国海洋大学(Ocean University of China)のシャンヤオ・チェン(Xianyao Chen)氏の研究チームは、最大水深2000メートルの海水のサンプリングを行う調査用フロートを用いて深海の水温を観測した。

 その結果、深海に沈む熱は1999年頃より増加し始めたことが分かった。これは、20世紀の急速な温暖化が横ばい状態になり始めた時期と一致する。

 研究チームによると、地表では増大する温室効果ガスが捕捉する太陽熱の量が増加しているにもかかわらず、海面温度はほとんど変化しないという現象がどのようにして起こり得るかは、深海水へ移動する熱の増加で説明がつくという。

 また従来の研究結果に反して、太平洋は熱の隠れ家にはなっていないことも判明した。

「この結果は驚くべきものだ」とトン教授は話す。「だが、データは極めて説得力があるもので、従来とは逆の結果を示している」

 またこの変化は、大西洋北部、アイスランド近海の海面における高塩分、高密度の海水の増加と同時期に発生している。

 この動的変化は、地球全体に熱を循環させる大西洋の巨大海流の速度を変化させる原因になっていると論文は指摘している。

「軽い海水の上に重い海水がある場合、重い海水は急速に沈降し、熱を連れていく」とトン教授は説明する。

 同教授は「海水の塩分によって引き起こされる循環サイクルが存在し、これによって大西洋と南極海の深海に熱が蓄えられる」と付け加えた。

「加熱期に急速な温暖化が30年間続いた後、現在は冷却期に入っている」

 現在の温暖化の減速はあと10年間続く可能性があり、その後に急速な温暖化傾向に戻る可能性が高いと研究チームは話している。

 今回の研究は、全米科学財団(National Science FoundationNSF)と中国国家自然科学基金委員会(National Natural Science Foundation of ChinaNSFC)より資金供与を受けて行われた。(c)AFP