エボラ感染の米国人2人が退院
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【8月22日 AFP】リベリアでエボラ出血熱に感染し、未承認薬で治療を受けていた米国人2人が回復し、無事退院した。医師らが21日明らかにした。
西アフリカでエボラ出血熱が史上最悪規模にまん延する中、いずれもキリスト教系支援団体に所属しているケント・ブラントリー(Kent Brantly)医師(33)とナンシー・ライトボル(Nancy Writebol)さん(60)は先月、リベリアの首都モンロビア(Monrovia)で感染した。
2人は3週間前、米ジョージア(Georgia)州アトランタ(Atlanta)のエモリー大学病院(Emory University Hospital)に入院し、特別隔離室で治療を受けていた。2人には遺伝子組み換えタバコの葉の中で作られる3種類の抗体を含む「ZMapp」という薬が投与されたが、医師らはZMappが2人の回復の一助になったかどうかを確認することは不可能だとしている。
エモリー大学病院感染症科のブルース・リブナー(Bruce Ribner)科長は、「両患者の退院によって公衆衛生が危険にさらされる恐れはない」と断言した上で、「かなり致死力の強い病気ではあるが、臓器に重度の損傷がない限り、大半の患者は完治するものと考えている」と述べた。
ブラントリー医師は、笑顔で妻と手を取り合い、痩せてはいるものの元気そうな姿を見せ、報道陣を前に事前に用意した声明を読み上げた。「生き延びて、元気で家族と共にいられる喜びをかみしめています」
ライトボルさんは今月19日に退院したが、記者会見場には現れなかった。退院発表が控えられたのは、本人がプライバシーの尊重を願い、体調の詳細が公表されることを望まなかったためと、医師らは説明している。
■エボラ死者1350人に
今年3月以降、リベリア、ギニア、シエラレオネ、ナイジェリアでまん延しているエボラウイルスにより1350人が死亡、感染者数は2400人を超えている。発熱や嘔吐(おうと)、下痢、臓器不全、出血を伴うこの病気に有効な治療薬やワクチンは確立されていない。
体液が直接触れることで感染するため、医療従事者や性交渉のある者同士に加え、葬儀で遺体に口づけしたり触れたりする人の感染リスクが特に高いとされる。
世界保健機関(World Health Organization、WHO)はリベリアの医師2人と看護師1人にもZMappが投与されたと発表。WHOの声明によると、「看護師と1人の医師は明らかに回復しつつある。もう1人の医師の容体は深刻ながらも若干改善している」という。
しかしZMappの生産量は少ない上、医師らによると、臨床試験が厳密に行われない限り、この薬が患者の回復に寄与したかどうか判断することはできないとしている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN