【8月20日 AFP】複数の国で広く普及している「より安全な農薬」が含有する化合物「ヨウ化メチル(CH3I)」に、自然界で水銀と反応して有毒化学物質を生成する可能性があるとの研究論文が、19日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 論文によると、有毒性を持つとして規制の対象となった臭化メチルの代替化合物であるヨウ化メチルには、有毒化学物質を生成して人間と野生生物の双方に脅威を及ぼす恐れがあるという。

 論文を発表した米国と中国の国際研究チームによると、「環境への影響がまだ十分に明らかになっていないにもかかわらず」、複数の国ではヨウ化メチルが「薫蒸剤」として承認登録されているという。

 オゾン層を破壊する物質を特定し、その生産、消費、取引を規制することを目指す国連(UN)の「モントリオール議定書(Montreal Protocol)」に基づき、段階的に廃止が進められている臭化メチルに代わって用いられているのが、このヨウ化メチルだ。

 研究チームは今回の研究で、2008年に米環境保護局(US Environmental Protection AgencyEPA)から薫蒸剤として承認された化合物のヨウ化メチルが持つ作用について調査した。ヨウ化メチルは、日本やニュージーランドを含む数か国でも承認登録されている。

 ヨウ化メチルは臭化メチルに比べて、土壌中での分解速度が遅いため、流出すると自然界の川や池などに流れ込む可能性が高いと研究チームは指摘。また、ヨウ化メチルには、太陽光の下で水銀と反応してメチル水銀を生成する恐れがあることを、池の水を用いて行った施設内での実験で明らかにした。

 メチル水銀は、水銀化合物の中で最も危険性と毒性が高く、脳と免疫系に損傷を与える。同化合物は、魚の体内に蓄積される恐れがある。

 研究チームは、論文の中で「薫蒸剤は、害虫や雑草を抑制するために農地で広く使用されている」と述べ、臭化メチルの段階的廃止に伴い、ヨウ化メチルの使用が「劇的」に増加することが予想されると付け加えた。

「ヨウ化メチルは、有毒化学物質(メチル水銀)を生成することで、人間と野生生物の健康を間接的に脅かす恐れがあることを、今回の研究は明らかにした。この結果は、薫蒸剤としてのヨウ化メチルに対するより包括的なリスク評価の必要性を示唆している」と研究チームは指摘した。(c)AFP