【8月18日 AFP】夏季の南極では、オキアミを大量に捕食する多くのミンククジラが、1時間に最大100回ほどその大きな口を餌で一杯にしながら、水中で激しいせめぎ合いを繰り広げているとの最新の研究論文が、15日の英科学誌「Journal of Experimental Biology(実験生物学ジャーナル)」に掲載された。

 オーストラリア南極局(Australian Antarctic DivisionAAD)によると、海中でのミンククジラの捕食行動が記録されたのは今回が初めてで、その熱狂的ともいえるペースは予想を上回るものだという。

 AADの主任研究員、ニック・ゲールズ(Nick Gales)氏は、AFPの取材に「われわれは本当に驚いた」と語る。

「(餌に向かって突進する)回数の多さと彼らが海氷の下でオキアミを補食するためにいかに巧妙に行動しているかを知った。まさに目を見張るものだった」

 ミンククジラは他のヒゲクジラ科のクジラと同様、餌を集めるために口を大きく開いて前進し、口の中に餌を含んだ大量の海水を取り入れる。そして餌だけを残して海水を吐き出す。

 巨大なシロナガスクジラは餌を捕食するための1回の潜水中にこのような突進行動を2回~3回しか行わないが、それより体が小さいミンククジラは20回以上も行うことができる。30秒に1回のペースで行うこともあった。

 ゲールズ氏は「南極の氷の下で餌を捕まえて生きることは実に大変なことだ。彼らは餌場を見つけると、そこにいる餌を捕食するために信じられないほど熱心に動く」と説明する。

「これまでに記録された、ヒゲクジラ科のクジラによるこの手の餌の捕食行動としては、群を抜く突進回数だった」

 今回の活動記録は、豪州と米国の科学者チームが2013年に南極半島(Antarctic Peninsula)西方沖でミンククジラに取り付けた衛星タグを用いて実行された。

 ゲールズ氏によると、衛星タグを通じてミンククジラの位置、水深、加速度が把握できたとされ、またミンククジラの体長が9メートルほどであることから、体の大きなシロナガスクジラが到達できない海氷下の一部領域を餌場としていることも、今回の研究で明らかになったと同氏は付け加えた。

 ゲールズ氏は、声明の中で「主食であるナンキョクオキアミが海氷の下に集まり多くのミンククジラがこの領域に引き寄せられた結果、観測されたような激しい餌の奪い合いが起きている」と指摘。また「(そのために)海氷に何らかの変化が生じた場合には、ミンククジラの狩猟習性に影響が及ぶ可能性がある」と続けた。

 同氏によると、ミンククジラの海氷下での動作と潜水行動についてはこれまで謎だったとされる。しかし今回の研究を通じて、餌が豊富に得られる夏季の南極で、ミンククジラたちが脂肪を蓄えることを可能にしている「戦略」が明らかになった。

 ゲールズ氏は「これはまさに、オキアミを捕らえるための比類のない進化を遂げた『戦略』であり、ミンククジラの個体数が安定しているのはそのためだ。南極周辺の全海域ではミンククジラが50万頭以上生息していると思われる」と述べている。(c)AFP