エボラ出血熱、製薬各社が薬剤開発に全力
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【8月12日 AFP】過去最悪のエボラ出血熱の流行が西アフリカで拡大する中、製薬会社大手や研究機関による治療薬やワクチンの開発が急ピッチで進められている。
感染者の約90%が死亡するとされるエボラ出血熱に関しては、数種類の実験薬が存在するのみで、その多くは動物実験の段階を超えていないのが現状だ。
■ワクチン
世界保健機関(World Health Organization、WHO)のワクチン担当、ジャンマリー・オクウォブレ(Jean-Marie Okwo-Bele)氏は、フランスのラジオ局に対し、英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline、GSK)が開発中のワクチンが来月、安全性と有効性を検証するための臨床試験に入る可能性があることを明らかにした。試験結果は年末までに出るとしている。
米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases、NIAID)の支援を受けて開発されているGSK社のワクチンは、2種類の非伝染性エボラ遺伝子を含む、改変ウイルスもしくはベクターが用いられている。
NIAIDは、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)の子会社クルセル(Crucell)が行っている別のワクチン開発も支援しており、同社はこのワクチンについて、「1回の接種で、サルのウイルス感染を完全に予防することが証明されている」としている。
この薬剤については、32人のボランティアを対象に2006年に開始した臨床試験の第1段階で、特定の摂取量での安全性が示されている。
他方、米プロフェクタス・バイオサイエンス(Profectus Biosciences)社が開発中の動物ウイルス由来ワクチンは、臨床試験前の段階にあり、また米ペンシルベニア(Pennsylvania)州のトーマス・ジェファソン(Thomas Jefferson)大学は、確立された狂犬病ワクチンを基に薬剤の開発に取り組んでいる。
■治療薬
マップ・バイオファーマスーティカル(Mapp Biopharmaceutical)社が製造する抗体3種類を含む「ZMapp」は、西アフリカでエボラ出血熱患者の治療にあたっていた際に感染したキリスト教系団体の米国人要員2人に投与された治療薬で、最近では同様に感染した国際慈善団体のスペイン人にも投与されている。
薬剤が投与された米国人2人の病状は快方に向かっているとされる。しかし、この実験薬はエボラ出血熱に感染したマウスやサルの治療で試験されたのみで、2人の回復が本当に薬剤によるものと断言するには時期尚早だとしている。
一方で米規制当局は先週、カナダに本社を置くテクミラ(Tekmira)社の実験薬TKM-Ebolaに対する規制を緩和。感染者への投与が行われる可能性もあるという。米国防総省(US Department of Defense)との1億4000万ドル(約143億円)規模の契約の下で開発が進むこの薬剤は、サルを使った試験でエボラ出血熱に対する100%の予防効果がみられたとされる。
■最優先事項
仏リヨン(Lyon)の国立保健医学研究所(Inserm)のエルベ・ラウル(Herve Raoul)所長は、有効な抗ウイルス薬の開発が最優先事項と語り、患者体内でウイルスの増殖を防ぐ薬剤によって免疫システムが回復し、抗体がウイルスと闘えるようになるとした。(c)AFP/Brigitte CASTELNAU