【8月11日 AFP】ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前米国務長官は、米誌アトランティク(Atlantic)が10日に掲載したインタビューの中で、イラクとシリアでのイスラム武装勢力の台頭はバラク・オバマ(Barack Obama)大統領の政権下での中東政策の失敗が招いたものだと批判した。

 特にシリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領に対抗する反体制勢力に対し米政府が傍観の立場を決めたことが、最も過激な反体制組織であるイスラム教スンニ派(Sunni)武装組織「イスラム国(Islamic StateIS)」台頭への道を開いたと、クリントン氏は指摘している。

「(オバマ政権は)イスラム主義者や世俗派、そして中庸的な人々などアサド大統領への抗議に立ち上がった人々による信頼できる反体制勢力の構築の支援に失敗した。この失敗が生み出した巨大な空白は、イスラム過激派戦闘員たちによって埋められた」(クリントン氏)

 次期大統領選の出馬が取り沙汰されているクリントン氏は、国務長官だったオバマ大統領の1期目にシリアの反体制派への武器支援を主張したが、かなわなかった経緯がある。

 今回のインタビューは、イスラム国のクルド人自治区侵攻を防ぐためとしてオバマ大統領が7日にイラクでの限定的な空爆実施を承認する以前に行われた。

 2011年にイラクから米軍を完全撤退させたオバマ大統領は、米軍が再びイラクの地に戻ることはないと言明し、イスラム武装勢力の脅威に対抗するため、イラクには全ての宗派・民族を包括した統一政府の樹立が必要だと訴えている。

 これに対しクリントン氏はインタビュー記事の中で、オバマ大統領には、イスラム武装勢力に対する戦略が欠けていると批判。「大国には組織化原理が必要だ。(オバマ大統領のスローガンである)『ばかげたことをするな』というのは、これに当たらない」と述べた。

 さらにクリントン氏は、米国はイスラム過激派を封じ込める「包括的な」戦略の構築が必要だとし、これを長期におよんだ冷戦下における旧ソ連主導の共産主義に対する米戦略に例えた。

 オバマ大統領から距離を置こうとする試みとみられるクリントン氏の主張は、シリア、イラク、ウクライナの紛争問題で米国の指導力を発揮できず政治空白の拡大を招いたとする共和党のオバマ批判とも一致する。(c)AFP