【8月6日 AFP】野生種トマトに存在する遺伝子を導入し、栽培種トマトの苗を自然光と人工光の下で1日24時間生育させることを可能にしたとの研究論文が、5日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。これにより、収穫高を最大20%増やすことができるという。

 現代のトマトの苗については、連続光の下で栽培すると葉に大きな損傷が生じる恐れがあることが1920年代に行われた実験で明らかになっている。

 そのため出荷用のトマトは、光の照射を1日約16時間に制限した昼夜サイクルの下で栽培する必要がある。

 一方で、レタスやバラなどの他の植物ではこうした問題がないため、連続光で一日中生育させることができる。これは、大規模な工場式温室栽培を行うのに望ましい特性だ。

 オランダ・ワーヘニンゲン大学(Wageningen University)の研究チームは、南米を原産とする野生種のトマト1品種のゲノム(全遺伝情報)を詳細に調べた。

 結果、連続光に対する耐性を与える「CAB-13」と呼ばれる遺伝子を7番染色体上で発見した。

 研究では、このCAB-13遺伝子を遺伝子組み換え技術を用いず、異種交配させる従来通りの方法で現代のトマト苗に導入し、作出した交配種に対して連続光の試験を実施したという。

 論文によると、1日24時間の連続光で栽培した苗は、温室内で16時間の条件で栽培した苗に比べて収穫高が最大20%増加したという。

 研究を率いたアーロン・ベレズ・ラミレス(Aaron Velez-Ramirez)氏によると、これまでのところ、交配種のトマトの味や貯蔵寿命に悪影響が及んでいる兆候はみられないとされる。

 同氏は、AFPの電子メール取材に「16時間の光照射周期で生産したのと同じ特性を持つトマトが単に多く採れるということだけのようだ」と述べた。

「トマトと同じ科に属するジャガイモやペチュニア(ツクバネアサガオ)の一部品種も同様に連続光に弱い性質を持っている。そのため、連続光に対する耐性を与える方法を見つけることはこれらの品種に恩恵をもたらすかもしれない。ただ、そうすることに経済的なメリットはないだろう」

 多くの植物種は連続光への耐性を持っている。しかし照明にかかるコストを考慮すると、高価な作物を栽培しなければ経済的な意味をなさないと同氏は説明。そう述べた上で「科学的な観点からすると、連続光に耐える種もあれば、耐えられない種もある理由を探るのは常に興味深いことだ」とベレズ・ラミレス氏は付け加えた。

「このような疑問に答えを見つける際には、植物がどのように機能しているか、周囲の環境にどのようにして適応しているかなどについて多くのことを学ぶことができる」

(c)AFP