1950年代の抗生物質乱用で細菌の耐性強化、新生児のリスク増
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【8月6日 AFP】広範囲の菌種に有効な抗生物質「テトラサイクリン」を1950年代に無分別に使用したことにより劇症型の細菌が生まれ、新生児の感染リスクを増大させたとする仏パスツール研究所(Pasteur Institute)の調査研究が4日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。
B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae、GBS)は腸や尿路、生殖管などに常在するごく一般的な細菌で、全人口の15~30%がこの細菌を保持しているが、それで健康を害することはほとんどない。しかし帝王切開も含めた出産時に、新生児が羊水を通じて細菌にさらされた場合には危険で、致死性の肺炎や髄膜炎、血液感染症などを引き起こす可能性がある。
一方、テトラサイクリンは抗生物質がもてはやされた第2次世界大戦後に過剰に使用され、テトラサイクリンに弱いGBSの株は一掃された。ところが優勢になった耐性の強い株が生き残り、現在では人体内に存在するGBSの90%はこの耐性菌だという。この劇症型の株は、新生児に慎重な予防措置を施さない場合、危険だという。
今回の研究では、1950年から現在までに集めた229のGBSの試料の遺伝情報を解明し、GBSの系統図と進化をたどることができた。その結果、CC17と呼ばれる劇症型の株が1960年代初頭に登場し始めた時期と、米国や欧州でGBSによる症例が急増し新生児3人に1人が影響を受けたとされる時期が一致していることが分かった。
論文は「1948年以降のテトラサイクリンの使用により、人体内に存在していた多種類のGBSが、テトラサイクリンに耐性のある、とりわけ宿主にうまく適応した数種のGBSに完全に置き換わった」と述べている。
研究主任のフィリップ・グレイサー(Philippe Glaser)氏は「(テトラサイクリンの乱用による)影響は、テトラサイクリンが一般的に使用されることのなくなった今日まで及んでいる」と語っている。(c)AFP