【8月1日 AFP】中東・レバノンで今週ライブ公演を行った英バンド「マッシヴ・アタック(Massive Attack)」が、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)に暮らす子どもたちにコンサートを捧げると表明し、イスラエルによるパレスチナ人の「虐殺」を公然と非難した。

 音楽性で高い評価を得ている同バンドは7月29日夜、激しい戦闘が続くガザ地区からわずか数百キロの距離にあるレバノンの港湾都市ビブロス(Byblos)で、中東で唯一となるコンサートを開催。曲に合わせてパレスチナの旗を振る観客たちを前に、イスラエルのパレスチナ攻撃に対する異例の非難声明を発表した。

 楽屋でAFPの独占インタビューに応じたフロントマンのロバート・デル・ナジャ(Robert Del Naja)氏は、「地球上で最も人口が密集する地域の1つに、爆撃が行われている。しかも、そこにいる市民たちは脱出することが許されていない。ただただ、信じがたいことだ」と語った。

 ナジャ氏はさらに、イスラエルについて「自衛のために、他の人々を皆殺しにしようなどと、本当に考えるものだろうか? 21世紀にもなって、信じられない」とコメント。また、「政治家たちは沈黙を守っている。道義に外れたまねだ。政治家に向いていないんじゃないか」と、世界が手をこまねいている現状も厳しく批判した。

■巨大スクリーンに連帯メッセージ

 コンサートでは、パレスチナ人だけでなく、シリア人難民や武装勢力によってイラクを追われたキリスト教徒たちとの連帯を掲げたメッセージが、演奏に合わせて巨大スクリーンの黒い画面上に次々と披露された。代表曲「アンフィニッシュド・シンパシー(Unfinished Sympathy、未完の共感の意)」の演奏時には、次のようなメッセージが提示された。

「1948年以降、ガザは占領され続け、制約の下に置かれている」「7月8日、イスラエルは『境界防衛作戦(Operation Protective Edge)』を開始した。ガザの人口181万6000人。イスラエルの死者60人、うち民間人7人。パレスチナ人の死者1200人、うち民間人864人」

 1990年代初頭から活躍するマッシヴ・アタックは、2003年に米英主導の多国籍軍がイラクへ侵攻した際にも公然と反対を表明するなど、これまでにも数々の抗議行動を行っている。

 今回のコンサート前には、ナジャ氏とグラント・マーシャル(Grant Marshall)氏のメンバー2人がレバノンの首都ベイルート(Beirut)にあるパレスチナ人難民キャンプ、ブルジ・バラジネ(Burj al-Barajneh)を訪問。コンサートの売り上げの一部も、同キャンプでの活動に寄付される。

 レバノンには、1948年のイスラエル建国に伴って自宅を追い出されたパレスチナ人難民とその子孫およそ50万人が居住し、国連(UN)が運営する同国各地の難民キャンプで何十年も暮らしている。

 抗議の表明としてイスラエルでの公演を拒否したマッシヴ・アタックには、その率直な物言いへの非難の声も上がっている。しかし、ナジャ氏は「でも、この世界は民主的で、インターネットで繋がり、技術革命に満ちた世界なんだ。これは、行動する民主主義だ。もし、私がミュージシャンだという理由で黙っていろと言われるのなら、それこそどうかしているよ」と話した。(c)AFP/Serene ASSIR