【7月31日 AFP】パキスタンで、これまで酸による攻撃がなかった地域で酸攻撃が相次いで発生し、女性に自宅にこもることを強要するためにイスラム過激派が酸攻撃を始めた恐れが出ている。

 被害女性の顔をひどく傷つけ、失明させることも多い酸攻撃は、個人的な恨みや家族の恨みを晴らすための手段として長らく用いられており、毎年数百件規模で発生している。

 だが、数年前まで酸攻撃とは無縁だったパキスタン南西部バルチスタン(Baluchistan)州で先週、2日連続で2件の酸攻撃が発生したことは、新たな傾向が生まれ始めていることを示唆している。

 パキスタンにおける酸攻撃は、被害者と加害者に面識があることが多い。加害者が捕まると、その親族は被害者に「名誉」を傷つけられたと主張したり、被害者の「みだらな」行為で一族が汚されたと訴えたりする。

 だが最近の事件では、被害者らは加害者と面識がなかった。このことから、バルチスタン州で台頭するイスラム過激派による攻撃の可能性が指摘されている。

■バルチスタン州の女性の社会進出阻止が狙い、分離派が非難

 人口が少なく土地が広く資源の多いバルチスタン州は、長らく分離派反政府勢力の活動拠点となってきた。分離派は女性が多い左翼世俗派を取り込み、キューバ革命の指導者エルネスト・チェ・ゲバラ(Ernesto Che Guevara)といった社会主義の象徴的人物を崇拝する。

 同州の鉱物やガス資源への権利拡大を目指して闘争している分離派によれば、女性への酸攻撃は、国の後ろ盾を得て国民を服従させようとするイスラム主義者とのイデオロギー闘争における最前線になっているという。

「これらの非人道的な行為は、恐怖の風潮を作り出すことで女性の教育参加や社会参加、政治参加、人生の経済的な側面への参加を阻止するのが目的だ」と、バルチスタン州の自治権拡大を求めるバルチスタン国民党(Baluch National Party)のジャハンザイブ・ジャマルディニ(Jahanzaib Jamaldini)副党首は語った。(c)AFP/Maaz KHAN