【7月30日 AFP】イタリアの豪華客船コスタ・コンコルディア(Costa Concordia)号で新婚旅行を過ごした男性が2年半後、今度は座礁した同船の解体チームに加わる巡り合わせとなった。

 伊紙スタンパ(La Stampa)によると、2012年1月にイタリア中部ジリオ(Giglio)島沖で座礁したコスタ・コンコルディア号の解体作業を依頼された企業のうちの1社に勤めるのは、 ロレンツォ・カピッツィさん。同紙に「自分がやるべきことをするだけ。でも、僕たちの人生の中で最高の1週間を過ごした客室のことを考えずにはいられないだろうね」と語った。

 カピッツィさんと妻のラウラ・ポンテさんは、1912年に沈没した英豪華客船タイタニック(Titanic)号よりも大きく、高級レストランやプール、カジノなどが備わる「浮かぶ街」と呼ばれるコスタ・コンコルディア号に乗り、スペイン・バルセロナ(Barcelona)、マルタ(Malta)、イタリア・パレルモ(Palermo)をまわり新婚を祝った。それから5か月後、コンコルディア号は死者32人を出す座礁事故を起こした。

 カピッツィさん夫妻が過ごした客室は、船体が倒れた後も水面より上に残っていたため、他の分部よりは状態が良いかもしれない。それでもカピッツィさんは、船内に踏み込むときには勇気が要るだろうと話し、「客観的ではいられないね。事故の夜のパニックや、乗客が感じた恐怖を考えずに船内を歩くなんて不可能だ」と語った。

 妻のポンテさんは、27日にようやくジェノバ(Genoa)の港に引き戻されたコスタ・コンコルディア号の解体については、何も知りたくないという。「友人を失うような感じがする。生き生きした、情熱的な友人の思い出はとっておきたいでしょう」。ポンテさんは乗船した際の品々をとっておいた。「船の模型、毎日のスケジュール表、伝票、券、コスタ・コンコルディア号のロゴマークが入った写真」などだ。熱心なコレクターから譲ってほしいと打診があったが、ポンテさんは売るつもりはない。

 航海の初日の晩に行われた緊急避難訓練の際、2人は冗談を言いあったことを覚えている。「二度と船を降りたくないと思えるような、あんなに豪華で完璧な雰囲気の中で、何かが起こるなんてあり得ないと思った」とポンテさんはいう。

 コスタ・コンコルディア号の解体は、世界最大の回収作業の締めくくりとなる。(c)AFP