【7月29日 AFP】いずれの航空会社であれ、乗客が多数搭乗するジェット機がこつぜんと消えたり墜落したりすれば、以降の運営への経済的な影響は計り知れない──。マレーシア航空(Malaysia Airlines、MAS) のように、長年にわたって赤字を計上していればなおさらだ。

 航空業界の専門家らは、数か月のうちにMH370便(3月に失踪)とMH17便(7月17日に墜落)を失ったことで打撃を受けたマレーシア航空 は、破綻の瀬戸際にまで追い込まれていると指摘する。同航空については、かつての大韓航空(Korean Air)やガルーダ航空(Garuda Indonesia)のように、一連の混乱を切り抜けることができるのかどうかに注目が集まっている。

 さらに、マレーシアのフラッグキャリアであるマレーシア航空が生き残るためには、その「財布のひも」を握る政府系ファンドが迅速に介入する必要がある他、大幅な構造改革も必要になるとされる。

 乗客乗員239人を乗せたMH370が消息不明になる以前から、マレーシア航空は長年、利用者の減少と損失の増大に苦しんできた。しかし、その経営状況は同便の事故で悪化。さらに298人を乗せてウクライナ上空を飛行中に撃墜されたとみられるMH17が同社をさらなる苦境に立たせることになった。

 マレーシアに拠点を置く航空コンサルタント、エンダウ・アナリティクス(Endau Analytics)のアナリスト、シュコア・ユソフ(Shukor Yusof)氏はAFPに対し、「MH17便の失踪後にマレーシア航空が直面した厳しい現実は、政府が迅速に戦略を打ち出さなければ、企業の自滅と最終的な解体につながり得るということを示唆している」と語った。

 マレーシア航空は「1日当たり100万~200万ドル(約1億200万~2億400万円)」を失っており、手元資金に関するユソフ氏の推計に基づくと、同社が経営を継続できるのは、あと半年ほどだという。

■「イメージ」が全て

 MH17便はウクライナの親ロシア派武装勢力が発射したミサイルで撃墜されたとみられており、マレーシア航空にはどうすることもできなかった。しかし、同社便への予約はMH370便の失踪直後と同様に大幅な減少が予想されている。

 多くの人たちの間では、マレーシア航空の株式のうち69%を保有する同国政府系の投資会社、カザナ・ナショナル(Khazanah Nasional)が株式の非公開化に踏み切るのではとの臆測が飛び交っている。非公開化されれば、痛みを伴う再建策やその他の改革実施に向けた準備が整うことになる。(c)AFP/Bhavan JAIPRAGAS