遺体数え続けるパレスチナ人医師の日々、ガザ地区
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【7月29日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)のシーファ(Shifa)病院のある一室では電話がひっきりなしに鳴り続ける──その部屋は、ガザ救急当局の広報、アシュラフ・クドラ(Ashraf al-Qudra)氏のオフィスで、寄せられる情報はイスラエルの攻撃による死傷者についてのものばかりだ。
イスラエルとパレスチナとの衝突で、これまでに1000人以上が死亡、負傷者は6000人を超えている。現在、衝突による死傷者の数を把握することが、クドラ氏のフルタイムの仕事になってしまったという。8日にイスラエルによる軍事作戦が開始されて以降、同氏の睡眠時間は1日2時間ほど。それもオフィスに敷いたマットレスで仮眠するばかり。スタッフたちは24時間、最新の死傷者数を彼に伝え、その情報を求めてジャーナリストたちから電話が四六時中かかってくるという。
彼は束の間の休息を取ろうと横になったが、すぐに息を切らしてやってきたアシスタントの邪魔が入った。「ドクター・クドラ、シュハダ病院への爆撃で非常に多くの死傷者が出ています!」
同時に電話が鳴り、ラジオからは死傷者についての情報が伝えられた。クドラ氏はすぐにメモを取り始め、シュハダ病院で出た負傷者の搬送先の調整にあたった。
「イスラエルの空爆から逃れられるような安全な場所はない」と、この仕事を4年間務めているクドラ氏は言う。「欧州系の病院まで狙われた。この病院もいつか爆撃されるだろう」と、負傷者が救急車で次から次へと運び込まれるさまを窓から眺めながら語った。
国連人道問題調整事務所(OCHA)が発表した統計によると、犠牲者の4分の3近くは民間人で、約4分の1は子供となっている。またこれまでに病院やクリニックなどの医療施設18か所が爆撃されているとしている。一方のイスラエル側については、兵士43人が死亡、民間人の犠牲者は3人と発表された。
シーファはガザにある7つの病院の中で最大の規模を持つ。他の病院と同様、イスラエルによる攻撃が始まって以降は24時間体制で負傷者を受け入れている。
2か月前まで、クドラ氏はガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)の保健省で広報を務めていた。だがハマスのために働いていたのではなく、あくまでも人道的な仕事をしていただけだと強調する。「私には果たすべき人道的な任務があると強く信じている」と、日々数百件に上る電話への対応が強いられる現在の仕事について語った。
毎日夕方になると、同氏は病院で記者会見を開き、犠牲者の数と名前を読み上げる。この紛争を報じるジャーナリストたちにとっては、正確な数字が得られる唯一の情報源でもある。1日の死者数が100人を超えるなど、死傷者の数が一気に急増する状況では、独自にすべての犠牲者を確認することができないからだ。クドラ氏は、「私たちが使う統計は正確で客観的だ」と述べ、発表する数字に間違いはないとしている。
同氏が初めて、イスラエルとハマスの大規模な戦闘を経験したのは、2012年11月。この衝突では、8日間でパレスチナ人177人、イスラエル人6人が殺害された。「死体や体の一部をずっと目の当たりにしていた。でも一番心を揺さぶられたのは、女性と子供の死体だった」と当時を振り返った。(c)AFP/Adel ZAANOUN