【7月28日 AFP】過去40年にわたり、地球規模で人口が倍増し、その一方で昆虫や毛虫、軟体動物や甲殻類といった無脊椎動物が45%減少したとする研究論文と、大小の野生生物の地球規模での消失が紛争や暴力増加の要因となっているとする研究論文が、25日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 脊椎を持たない無脊椎動物は、植物の受粉、害虫の抑制、水の浄化、土壌の肥沃化などに貢献しており、地球にとって重要な存在だ。研究によると陸生の脊椎動物では、過去5世紀の間に332種が地球上から姿を消し、残っている種も生息数が以前の4分の3程度に減っているという。

 論文を発表した英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)のベン・コリン(Ben Collen)氏は「無脊椎動物の減少も、より大きな生物と同程度であることが分かり衝撃を受けた。われわれは無脊椎動物はより耐性があると考えていたからだ」と述べた。

 科学者らは無脊椎動物の減少の原因として、生息環境の喪失と、全球的な気候変動の2点を挙げる。さらに、地球規模での野生生物の減少により、紛争や騒乱、組織犯罪、児童労働などが世界中で増えている可能性があるとした。

 米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の研究者らが率いた研究では、紛争や騒乱の増加は食糧難や失業によってもたらされ、その結果、人身売買や犯罪がさらに横行する可能性が指摘された。論文の共著者で、同大のジャスティン・ブラッシェアーズ(Justin Brashares)准教授(環境と保全)は「本論文は野生生物の減少を、社会的衝突の症状ではなく、むしろ原因と捉えたものだ」と説明する。

 例えば、ソマリアで海賊が増えているのは、漁業権をめぐる争いに端を発していると指摘。「ソマリアの漁師や住民たちにとって、魚や野生生物は唯一の生活の糧だった。それが世界的な漁船団に脅かされるようになり、極端な行動を起こさせている」とブラッシェアーズ氏は説明した。

 また研究者たちは、象牙やサイの角の取引増加についても、消滅しつつある野生動物と関連する違法産業が急速に拡大している証拠だと指摘する。

 論文の共同筆者で米カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UC Santa Barbara)のダグラス・マコーリー(Douglas McCauley)准教授は「野生生物の消失は基本的に、そうした資源に頼っている人々の足をすくうことになる。これは生物の種を失うだけではなく、子どもを失い、地域社会を破壊し、犯罪を助長していることにつながる。こうしたことから、野生生物の保全はこれまでになく重要な任務だ」

(c)AFP