【7月21日 AFP】（一部更新）ウクライナ東部上空でマレーシア航空（Malaysia Airlines）MH17便が撃墜された事件で、オランダの法医学専門家が21日、収容された犠牲者の遺体の確認作業に入った。

 これに先立って、ウクライナのアルセニー・ヤツェニュク（Arseniy Yatsenyuk）暫定首相は同日、地対空ミサイルで撃墜されたとみられるMH17便に搭乗していた298人のうち250人の遺体が収容されたと発表。犠牲者が最も多かったオランダの当局が国際的な事故調査を主導するべきだとの見方を示し、ウクライナ政府としては「全員の遺体をアムステルダムに移送する用意がある」と述べていた。

 しかし、墜落現場は親ロシア派の支配地域にあり、遺体が運び込まれた貨車は親ロシア派の武装勢力が厳重に管理している。現場にほど近いドネツク（Donetsk）では同日、駅周辺で激しい砲撃があり、住民が逃げ惑う事態も起きている。

 墜落現場に近いトレーズ（Torez）の駅で取材に当たっているAFP記者によると、マスクとヘッドライトを付けたオランダの調査官2人が、遺体の収められた貨車の中を1つ1つ確認している。貨車には保冷機能が備わっているとされるが、内部からは異臭がただよい、遺体の温度が低く保たれている様子はあまりないという。だが、武装勢力50人余りが見張りに立つ中で取材に応じた調査官の1人は、「遺体の保管状況は良いと思う」と述べた。

 一方、国際機関の調査団はまだグラボベ（Grabove）の墜落現場に入れずにいる。これまでに現場へのアクセスが認められたのは欧州安保協力機構（OSCE）の監視員だけで、これも短時間で退去させられている。

 28人が犠牲となったオーストラリアのトニー・アボット（Tony Abbott）首相は「映像を見れば分かるように、現場はいまだに無秩序な状態にある」と指摘。ジョン・ケリー（John Kerry）米国務長官は、「酔った分離独立派の戦闘員」が「遺体をぞんざいにトラックに積み上げ、現場から遺体を運び出すだけでなく証拠隠滅も図っている」のは「グロテスク」だと非難している。(c)AFP