【7月18日 AFP】ウクライナ東部で乗客乗員298人を乗せたまま撃墜されたとみられるマレーシア航空(Malaysia AirlinesMH17便をめぐり、国際社会に衝撃と怒りの声が広がるとともに、この惨事を引き起こしたのは誰なのかという問いが渦巻いている。

 冷戦終結以来最悪の東西陣営の対立に油を注ぎかねない今回の墜落に衝撃を受けた欧米諸国の首脳らが、徹底した調査を求める中、ウクライナ政府は分離独立主義を掲げ同国東部を掌握している親ロシア派の武装勢力による「テロ行為」だと非難している。

 米国は「妨害を受けない」国際調査を要求し、親ロシア派に対するウクライナ政府の弾圧が緊張を引き起こし墜落につながったとするロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の主張を退けた。

 マレーシア航空によると、ロシア国境に近いグラボベ(Grabove)村に墜落したMH17便の乗客283人、乗員15人にはオランダ人154人、マレーシア人43人、オーストラリア人28人、インドネシア人12人が含まれている。またオーストラリアのメディアによると、乗客のうち約100人は同国で開かれる国際エイズ会議(International AIDS Conference)に出席する予定の研究者などだった。オーストラリアのトニー・アボット(Tony Abbott)首相は同便の墜落について「事故ではなく、犯罪だ」と述べ、ロシアの反応は「まったく満足できるものでない」と怒りを噴出させた。

 AFPの取材に応じた親ロシア派の仲介者は、国際調査団が安全に現地入りできることを武装勢力が保証していると述べている。しかし、早急な調査の開始を要求している米国のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は、墜落現場の証拠隠滅に警戒感を示している。

 国連安全保障理事会(UN Security Council)は18日、MH17便の墜落に関する緊急会議を招集し、英国のデービッド・キャメロン(David Cameron)首相は各国政府高官による危機対策会議を呼び掛けた。

■非難の応酬、録音公開の情報も

 親ロシア派の指導者の1人は、部下の戦闘員がウクライナ軍の輸送機と誤認してマレーシア航空機を撃墜した可能性があると示唆する発言をしたという。一方、ウクライナ側は、親ロシア派の司令官とロシアの工作員が撃墜したのが民間機だと気付いた際の通信を傍受したとする録音音声を公開した。

 しかし、親ロシア派はウクライナ軍による撃墜だと主張し、プーチン大統領もウクライナ領内での墜落に全責任があるのはウクライナ政府だと非難している。プーチン氏はオランダのマルク・ルッテ(Mark Rutte)首相との会談の中で「ウクライナ国内の重篤な危機を至急、平和的に解決する必要性が浮き彫りとなった」と述べた。

 マレーシア航空にとっては、今年3月にインド洋(Indian Ocean)で239人を乗せたMH370便が失踪してまもない間に2度目の惨事となった。マレーシアのナジブ・ラザク(Najib Razak)首相は18日朝、今回のMH17便の墜落について「すでに悲劇的な年だったが、さらに悲劇的な日だ」と述べ、ウクライナに専門家を派遣し「即刻調査を行う」と発表した。(c)AFP/Stephane ORJOLLET with Max DELANY in Kiev