【7月17日 AFP】インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)政権は、今月発表した2014年度予算案で同国経済の回復を約束したが、いわゆる「モディノミクス」による抜本的な改革を期待していた人々にとっては失望を与えるものとなった──。

 5月の総選挙で大勝し、政権を握ったインド人民党(Bharatiya Janata PartyBJP)は、今回の予算案で大胆な改革ではなく、小さな前進を選んだ。

 一部のエコノミストからは、アルン・ジェートリー(Arun Jaitley)財務相はもっと大胆な策を示すべきだったとする声が挙がっているが、コンサルタント会社Lalcapのディーパック・ラルワニ(Deepak Lalwani)社長はAFPの取材に「経済の『ビッグ・バン』改革を早急に実施することは現実的でない」と指摘した。

 予算案の中で、ジェートリー財務相は経済成長の加速、財政規律の厳格化、一部外資規制の緩和、インフラ整備を重要課題に挙げた。一方で、430億ドル(約4兆3700億円)に上る貧困層向けの補助金制度には手を付けなかった。これについては、ではどのようにして財政赤字削減の目標を達成するのかとの疑問の声が上がっている。

 エコノミストたちは、インド経済の潜在的な力は補助金削減と規制緩和によって引き出されるとし、また、厳格な労働保護法や複雑な土地収用法の改正が必要とも指摘している。だが、これらの課題は今回の予算案では触れられていない。

 ムンバイ(Mumbai)の証券会社、Prabhudas Lilladherの投資戦略部門責任者、Ajay Bodke氏はAFPの取材に対し、「ジェートリー氏は素晴らしい予算案を示した」と述べ、今はモンスーンによる雨量が少なく農家が困難な状況にあり、今回の予算案では補助金削減は選択肢になかったと説明した。

 ジェートリー財務相は、今年度の財政赤字を対国内総生産(GDP)比4.1%に抑制するとし、前政権の目標を維持すると発表。このこともエコノミストを驚かせた。

 キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)のアナリスト、マーク・ウィリアムズ(Mark Williams)氏は、インド経済は過去25年で最悪の景気低迷に陥っており、ジェートリー財務相は、前政権の目標を引き継いだことを後悔するだろうと述べた。

 予算案で示されたのは、防衛・保険セクターに対する外資の出資比率の上限を現行の26%から49%に引き上げることや、官民提携で道路、鉄道などのインフラ整備を行うなど、達成が比較的容易とみられる政策が目立つ。(c)AFP/Penelope MACRAE