【7月15日 AFP】ロシアの国営テレビ局「第1チャンネル(Channel One)」が、ウクライナ東部のスリャビャンスク(Slavyansk)でウクライナ兵らが3歳の男児をはりつけにしたという真偽不明の証言を報道し、報道倫理にもとるとして厳しく批判されている。ウクライナ政府は14日、プロパガンダ戦を強化しているとしてロシアを批判した。

 ウクライナ軍は分離独立派との3か月におよぶ戦闘を経て、今月にスリャビャンスクを奪還していた。

 第1チャンネルが放送したレポートの中で、ガリーナ・ピシュニャク(Galina Pyshnyak)という名の女性がロシアの難民キャンプでインタビューを受け、次のように語った。

「彼ら(ウクライナ兵たち)は、他に男性はいなかったため、中央広場に女性を集めました。女性や女の子、お年寄りたちを。すると彼らは3歳くらいの男の子を連れて行きました。下着とTシャツを着ていた小さい男の子でした。そしてイエス(・キリスト)のように掲示板にくぎではりつけにしました。1人がくぎを打ち付け、別の2人が男の子を押さえていました」

 第1チャンネルはピシュニャクさんの話として、男の子は死亡し、男の子の母親は気絶した状態で戦車に結び付けられ、中央広場の周辺を引きずられたと伝えた。

 この証言の真偽についてはAFPもその他のメディアも確認できていない。モスクワ(Moscow)にあるロシア国立高等経済学院(Higher School of Economics)のメディア専門家アンナ・カチュカエワ(Anna Kachkayeva)氏はAFPに、このレポートは「挑発的で常軌を逸しており異常だ」と語った。「憎悪をあおり、だまされやすい無垢(むく)な人たちを扇動するやり方だ」

 ロシアの著名ニュースサイト「Lenta.ru」の元編集者ガリーナ・ティムシェンコ(Galina Timchenko)氏はAFPに、ロシア有数のテレビ局である第1チャンネルは重大な倫理違反を犯したと指摘し次のように語った。「プロフェッショナルとしての倫理の甚だしい違反です。これは善悪の問題を超えています。事実だという証拠がないだけでなく、事実かどうかを疑問視さえしていない」

 露独立系紙ノーバヤ・ガゼータ(Novaya Gazeta)は、第1チャンネルが伝えたような出来事は聞いたことがないと話すスリャビャンスクの住民数人のインタビュー動画を公開した。(c)AFP/Anna SMOLCHENKO