【7月11日 AFP】ドイツは10日、米国によるスパイ疑惑であつれきが高まる中、米中央情報局(CIA)がベルリン(Berlin)へ派遣している代表者に国外退去を命じた。この問題は、両国の外交関係に近年で最大の亀裂をもたらしつつある。

 この処分は、米国による対独スパイ疑惑が1週間足らずのうちに2件相次いで浮上したことを受けて発表された。ドイツ国内では、米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)元職員が暴露したNSAによる大規模な情報収集スキャンダルで生じた怒りがまだくすぶっている。

 ドイツ政府の報道官は、「米大使館に駐在する情報機関代表に国外退去を命じた」と発表。北大西洋条約機構(NATO)加盟国の間でこのような措置が取られるのは極めて異例で、ドイツ側の怒りの強さを示している。

 独ニュースサイト「シュピーゲル・オンライン(Spiegel Online)」はこの動きを「外交地震」と表現。通常こういった処分が科されるのは、北朝鮮のような「のけ者国家」だけだとしている。

 これに対し、米ホワイトハウス(White House)はコメントを出していない。しかし在独米大使館と米国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)はいずれも、「独米両国民の安全を維持する」ためには安全保障協力の継続が「不可欠」だと強調している。

 過去にNSAが携帯電話を盗聴していたとされるアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は米国に対し、安全保障は同盟国間の「信頼の上に成り立つものだ」と改めて指摘した。

 ウォルフガング・ショイブレ(Wolfgang Schaeuble)独財務相は、さらに率直に怒りを示し、「(米国による)あまりの愚行に泣きたくなるほどだ」と述べた。(c)AFP/Frank ZELLER