【7月10日 AFP】米国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects AgencyDARPA)の研究者らは9日、脳を負傷した軍人や民間人の記憶を回復させることを目的とした、最新式の脳埋め込み型装置の開発に対する総額4000万ドル(約40億6000万円)の助成金授与について発表した。

 DARPAは、対象研究は飛躍的な科学的前進を示すものとする一方で、人間で有効に機能することが証明されるまでには、まだ多数の困難が待ち構えていると指摘する専門家らの意見を尊重する構えをみせた。

 ワイヤレスの埋め込み型装置をめぐっては、損傷を負った脳内の「隙間」を埋め、「陳述記憶」として知られる基本的な出来事、場所、状況などを容易に思い出せるようになることが将来的に期待されている。

 この種の記憶は、外傷性脳損傷で失われる場合がある。2000年以降に外傷性脳損傷を負った米国の軍人は27万人に上っており、民間人では毎年170万人が同様のダメージに見舞われている。

 能動記憶の回復に関するDARPAの「(Restoring Active MemoryRAM)」プログラムの責任者、ジャスティン・サンチェス(Justin Sanchez)氏は「われわれの構想は、脳損傷と機能障害を有する患者の記憶を回復させるための神経機能代替装置を開発することだ」と語る。

 DARPAによると、同局はこのような実験を行う上での倫理的な問題について慎重に検討しており、この種の研究に関連する潜在的な落とし穴をめぐり、神経科学の専門家らで構成される委員会との協議を重ねているという。

 DARPAの研究は、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が1億ドル(約100億円)の予算を投じた脳機能研究「BRAIN」を支援する4年計画の一環として進められている。

 DARPAの助成金は、最高2250万ドル(約22億8400万円)が米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)の科学者チームに、最高1500万ドル(約15億2300万円)が米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California Los AngelesUCLA)に、250万ドル(約2億5300万円)が米ローレンス・リバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)にそれぞれ授与される。