イタリアのコメ輸出が急増、小規模農家が作る高級米が人気
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【7月9日 AFP】(一部更新)アルプス山脈に抱かれたイタリア北部のベルチェリ(Vercelli)県はイタリア有数の稲作地域で、見渡す限りの稲田が広がる──。
イタリアはヨーロッパ最大のコメの生産国。健康志向の食通に人気の高級米を育てる小規模農家の台頭で、ここ最近は輸出が急速に伸びている。特にここで収穫されたコメは香り良く、リゾットとして美食家のテーブルに並ぶという。
「お金に余裕のある人たちの間で上品なお米として知られているんだ」と話すのは、祖父母の代から受け継がれてきた約80ヘクタールの農地でコメ栽培に従事するサンドロ・グェリーニ(Sandro Guerrini)さん。グェリーニさんが作るコメは「バラッジャ(Baraggia)」という品種。年間生産量は極めて少ないが、欧州連合(EU)の品質保証ラベルのおかげで高値で取引されている。
ミラノの取引所によると、ベルチェリで栽培されている別の品種「ビアローネナノ(Vialone Nano)」の卸売価格は、トン当たり約2000ユーロ(約27万7000円。これは世界銀行(World Bank)の食料価格指数のトン当たり425ユーロ(約5万9000円)を大幅に上回る。
イタリア農業当局のデータによると、ポー川(Po river)周辺地域の作付面積は25万ヘクタール。2013年の生産量は160万トンだった。
欧州域内の主な輸出先は英国で、13年の輸出量は4万5718トンで、2012年の3万2074トンから増加。EU域外への輸出量でも、2012年の10万53トンから2013年は11万9510トンに増えた。最大の市場はトルコで、輸出量が前年比139%増加。ロシア向けでも47%増を記録した。中国向けの輸出量はわずか25トンだったが、イタリアにとっては、潜在的な可能性を多く秘めた市場とみられている。
国連貿易開発会議(UN Conference on Trade and Development、UNCTAD)は、欧州産および米国産のコメ輸出増の背景には、「先進国における新たな食習慣や、発展途上国でのニッチ市場」があると指摘する。
ベルチェリでガイドを務め、地域の農業地帯を自転車で周るツアーを企画するクリスチャン・フェラーリス(Cristian Ferraris)さんは、この土地の土壌は稲作に非常に適していると説明する。「この辺りは平地で、粘土質の土壌だから、水が表面にとどまりやすい」
イタリアの稲作の歴史は12世紀にさかのぼる。カトリック教会に属するシトー修道会の修道士によってフランスから伝えられた。ただ、イタリアで本格的に稲作が始まったのは、イタリア・ルネサンス期に、レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)が設計したかんがい設備が導入されてからだという。(c)AFP/ Sonia LOGRE with Laure BRUMONT in Rome