【7月9日 AFP】英オックスフォード大学(Oxford University)などの研究チームがアルツハイマー病と診断された患者にみられる血中タンパク質の特定に成功した。アルツハイマー病発症の予測を可能にするかもしれない血液検査の開発に向けた大きな前進を報告する研究論文が7日、米学術誌「アルツハイマー病と認知症(Alzheimer's & Dementia)」に掲載された。

 アルツハイマー病を早い段階で診断する検査を開発することで、症状の進行を食い止めるための新たな治療法を模索する臨床試験での参加可能な患者を特定可能になる。アルツハイマー病は脳障害を起こす病気で、認知症の最も一般的な臨床型だ。

 今回の研究では、軽度の認知障害患者220人を観察した。

 英ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)で研究を主導したオックスフォード大のサイモン・ラブストーン(Simon Lovestone)教授(神経科学)は「われわれが行う治験では、患者に薬を投与する以前に脳への障害が過度に進行しているため、失敗に終わってしまうケースが多い」と説明する。

「簡単な血液検査は、新たな臨床試験に参加させるべき患者を今よりかなり早い段階で特定する助けになるとともに、病気の進行を防ぐことができる治療法の開発の一助になるかもしれない」

「次の段階では、さらに多くのサンプルを通じて今回の成果の検証を行う予定だ」

 研究チームは、1年以内にアルツハイマー病と診断された患者グループの87%で、血液中に存在するタンパク質10種類を特定。

 今回の研究は被験者数が限られているため、複合的な要因と発症機構を持つアルツハイマー病の完全な診断ツールがこれによって生み出される可能性は低い。

 だがどのような検査も、アルツハイマー病の進行を阻止または逆転することを目的とした薬学的研究の一助となるだけでなく、将来、高齢の肉親をどのように介護するか、彼らの機能が病気でひどく損なわれる恐れがある時期はいつかなどの生活様式を選択する上での助けになるだろう。

 英クイーンズ大学ベルファスト校(Queen's University Belfast)公衆衛生センター(Centre for Public Health)のピーター・パサモア(Peter Passmore)教授(加齢・老年病医学)は、今回の研究は「興味深い進歩」であり「認知症の潜在的な発症メカニズムに関するシグナルを提供するもので、われわれの知識をさらに深める助けになり、さらなる研究の方向性を与えるという点で重要だ」と述べている。(c)AFP/Naomi O'LEARY