【7月2日 AFP】ドイツ経済を支えてきた家族経営の中小企業が、後継者不足を背景に、中国の投資家を中心とした外国資本に買収されるケースが急増している──。2年前には、創業家から後継者を出すことができなかったドイツの建設機械メーカー「プツマイスター(Putzmeister)」が中国資本の手に渡っている。

 中国の大企業、三一重工(Sany)による約5億ユーロ(約695億円)のプツマイスター買収は、中国による欧州市場への投資としては当時最大規模だった。だがそれは氷山の一角にすぎなかった。

 ドイツの中小企業の約75%は家族経営だ。ハイテク産業に特化しているものが多く、同国の輸出を力強く後押ししてきた。しかし、親の世代から子の世代へと会社を引き継ぐという伝統は、過去のものになりつつあるようだ。

 マンハイム大学(Mannheim University)で中小企業について研究するデトレフ・キーズ(Detlef Keese)氏によると、家族経営の企業は90年代には70~75%あったが、現在は50%ほどに減少したという。

 この傾向について同国の商工会議所連盟は、高齢化社会を反映したものとみているが、同時に「社会現象」でもあるとしている。

 心理学者でビッテン(Witten)大学で家族経営についての講義を行うアリスト・フォン・シュリッペ(Arist von Schlippe)氏は、「多くの場合、子は親の後を継ぎたがらない。父親の苦労を見ているからだ」と述べ、「子供たちは人生や働き方について親とは違う考え方を持っている」と続けた。

 後継者がいなければ、未公開株式投資ファンドの資金援助を通じて自社株の買い占めを行う手もある。だが、ファンド自体がアクションを起こすケースやライバル企業による乗っ取りが生じる可能性もある。

 この観点からいえば、中国の投資家はより魅力的な選択肢だろう。彼らは既存の労働力に依存するだけでなく、経営陣をそのまま残すことも多い。さらに中国の投資家による高額での買収も魅力的だ。

 英会計事務所EYのデータによれば、中国によるドイツへの直接投資は2012年の4600万ユーロ(約64億円)から2013年には6800万ユーロ(約95億円)に増えた。

 フォークリフト製造会社「キオン(Kion)」、半導体製造の「Prema」、コンクリート機器大手「Schwing」──現在、これら独企業のすべてに中国資本が入っている。(c)AFP/Mathilde