【7月1日 AFP】米連邦最高裁判所は6月30日、家族経営の株式非公開企業が、従業員に提供する医療保険の適用対象から避妊薬や避妊器具を除外することを認める判断を下した。判決を受け、避妊反対派などからは信教の自由にとっての勝利だとの声が上がっている。

 訴えを起こしたのは、米オクラホマ(Oklahoma)州に本社を置く美術・工芸用品販売店「ホビー・ロビー(Hobby Lobby)」と、ペンシルベニア(Pennsylvania)州の住宅用木工製品会社。バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が国民皆保険を目指して成立させた医療保険改革法「医療費負担適正化法(Affordable Care Act)」(通称オバマケア、Obamacare)の具体的な規定について裁判で争われたのは今回が初めて。

 ホビー・ロビーを所有するグリーン(Green)家は敬虔(けいけん)なキリスト教徒の一家で、避妊対策を保険適用対象とすることを義務付けたオバマ大統領の医療改革に異議を唱えていた。ペンシルベニアの木工製品会社を所有する一族は、メノー派(Mennonite、再洗礼派の流れをくむプロテスタントの一派。平和主義と無抵抗を主張)を信仰している。

 オバマケアでは、避妊に断固反対するローマ・カトリック教会などの宗教団体に限り、従業員を対象とした医療保険の適用対象から避妊対策を除外することが認められていた。オバマ政権は、全米500店舗で1万3000人の従業員を雇用するホビー・ロビーについて、所有者のグリーン家の宗教的信条を理由に同様の例外措置を認めることはできないと主張し、原告の2社は1日当たり最大130万ドル(約1億3000万円)の罰金が科される可能性もあった。

 だが連邦最高裁の判事らは、連邦政府が正当な理由なしに米国民の信仰実践を阻む「著しい負担」を科すことを禁じた1993年の「宗教的自由回復法(Religious Freedom Restoration Act)」を根拠に、5対4でホビー・ロビー側の主張を認める判決を下した。

 ホビー・ロビーの共同創業者の一人、バーバラ・グリーン(Barbara Green)さんは声明で、「最高裁の判決は、私たち家族の事業だけではなく、自らの信仰を全うしたいと願う全ての人にとっての勝利」と述べた。

 一方、ジョシュ・アーネスト(Josh Earnest)大統領報道官は、「避妊は女性の健康と福利にとって重要な役割を果たしている」として、この判決が女性従業員の健康を脅かすものだと述べた。

 ホビー・ロビーは米小売業では珍しく日曜日に店を閉めている。ホビー・ロビーの他にキリスト教関係の書店35店舗も経営しているグリーン家は、利益の一部をキリスト教関連の慈善団体などに寄付している。(c)AFP/Robert MACPHERSON, Chantal VALERY