【6月30日 AFP】生物多様性を支え、気候変動を緩和するインドネシアの原始林が予想以上に速いペースで縮小しているとの研究論文が、29日の英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)」に掲載された。

 米メリーランド大学(University of Maryland)の地理学者ベリンダ・マルゴノ(Belinda Margono)氏率いる研究チームは、縮小の事実が衛星写真の分析で明らかになったとしている。発表した論文によると、インドネシアでは2000年から2012年までの12年間で、スリランカの国土面積にほぼ相当する約602万ヘクタールの原生林が失われたという。

 原生林または原始林は、木材やパルプの原料とするために栽培・管理される樹木の植林地とは区別されている。

 研究チームによると、調査期間中に消失のペースが上がり、2012年までに年間84万ヘクタールに達したという。これは、同年のブラジルにおける森林消失速度46万ヘクタールの約2倍に相当する。

「インドネシアの森林には、植物相と動物相の高い多様性がみられ、世界の植物の10%、世界の哺乳類の12%、世界の爬虫(はちゅう)類・両生類の16%、世界の鳥類種の17%などが存在する」と論文は述べている。

「インドネシア原生林の森林被覆の広範囲に及ぶ消失は、直接の結果として生息地の喪失を招き、関連する植物と動物の絶滅につながる」

 森林破壊は、気候変動との闘いにとっても痛手となる。原始林は新たに形成された森林に比べて、大気中から炭酸ガスを吸収・貯蔵する量が多く、貯蔵期間も長いことから、地球温暖化の軽減に貢献している。

 研究では、長期にわたって撮影された衛星写真が詳細に調べられた。

 その結果、2000年~2012年の期間に、インドネシアの全森林被覆は1579万ヘクタール後退しており、その38%に相当する602万ヘクタールが原生林だったことが分かった。

 国連食糧農業機関(Food and Agriculture OrganisationFAO)は2010年、インドネシア全体の森林消失面積を、2000年~2005年の期間では年間31万ヘクタール、2005年~2010年の期間では年間69万ヘクタールと推算していたと論文は指摘している。

 森林消失が最も進行しているのは、スマトラ(Sumatra)島とカリマンタン(ボルネオ島、Borneo)の平地林と湿地林あることが今回の研究で判明した。これらの地域では、主として農業利用のために樹木の伐採が行われている。(c)AFP/Richard INGHAM