ヒッグス粒子、正体解明に向け実験結果の分析進む 研究
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【6月23日 AFP】見えない粒子「ヒッグス粒子(Higgs boson)」に関する革新的な発見の発表から約2年──その詳細をさらに明らかにしたとする研究論文が、22日の英科学誌「ネーチャー・フィジックス(Nature Physics)」に掲載された。
新たな粒子の画期的な発見がなされたのは、フランスとスイスの国境上にある、欧州合同原子核研究所(European Organisation for Nuclear Research、CERN)の世界最大の粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider、LHC)」だ。今回の論文を発表したLHCの物理学者チームによると、LHCでの研究は、ヒッグス粒子の挙動をめぐる、長年の疑問の数々に答えを出しているという。
ヒッグス粒子は、他の粒子に質量を与える素粒子として1960年代にその理論が提唱された。この粒子がなければ、物質は存在しないことになるだろう。
その後数十年にわたって、ヒッグス理論を証明するための研究が重ねられ、ついに2012年7月4日、LHCのライバル同士だった2チームがそれぞれ独立した形で、ヒッグス粒子が持つとされる特性と一致する粒子の発見を発表した。
だが、この発見をより具体化し、「標準模型(Standard Model)」への適合を確認するためには、さらなる研究を重ねる必要があった。標準模型は、宇宙の目に見える物質を説明するための概念的枠組みだ。
ヒッグス粒子とみられるボース粒子(Boson)を発見したLHCの2チームのうちの1つである今回の研究チームは、このボース粒子の挙動は予測通りで「それらしく見える偽物」ではないと論文の中で述べている。
論文によると、LHCで行われた衝突実験から得られた膨大な量のデータを解析した結果、このボース粒子は、標準模型の理論に沿って、フェルミ粒子(Fermion)と呼ばれる一群の素粒子へと正しく崩壊していることが分かったという。
LHCの実験装置「コンパクト・ミューオン・ソレノイド(Compact Muon Solenoid、CMS)」を用いて行われた今回の研究を率いた米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、MIT)のマーカス・クルート(Markus Klute)氏は「これは非常に飛躍的な進歩だ」と語る。
「電子などの粒子はヒッグスフイールドと結合することで質量を得ていることがこれで分かった。まさに心躍ることだ」
ヒッグス粒子の質量は発見当初、125ギガ電子ボルト(GeV)から126GeVの間とされた。GeVは素粒子の質量を表す単位で、1GeVは陽子1個の重さに相当する。
実験で得られたデータを後に分析した結果、このボース粒子は「スピン」がゼロで迅速に崩壊し、光子(光の粒子)やいわゆる「Wボソン」や「Zボソン」の組になることが判明した。
クルート氏は、MITが発表したプレスリリースの中で「われわれは今回、この新たな粒子の主な特徴を明らかにした」とし、「これらのことはすべて、標準模型に一致している」と述べている。(c)AFP