【6月23日 AFP】慢性ストレスが心臓発作や脳卒中を引き起こす仕組みを解明したかもしれないとの研究論文が22日、発表された。ストレスが引き金となり、病気と闘う白血球が体に害を及ぼす恐れがあるほど過剰に生成されることにその糸口があるという。

 過剰な細胞は動脈の内壁の上に凝集して、血液の流れを抑制し、血栓の形成を促す。血栓は血行を妨げたり、内壁からはがれて体の他の部位にまで流れていったりする。

 論文の共同執筆者の1人、米ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のマティアス・ナフレンドルフ(Matthias Nahrendorf)氏は、白血球は「感染症との闘いや治癒には欠かせないが、体内に過剰に存在したり、不適切な場所にあったりすると害を及ぼす恐れがある」と指摘する。

 慢性ストレスが循環器疾患の原因になることは、医師らの間では以前より知られていたが、そのメカニズムはこれまで解明されていなかった。

 その関連性を明らかにするため、ナフレンドルフ氏と研究チームは、集中治療室(ICU)で働いている専門医学実習生29人を詳しく調べた。

 彼らの職場環境は、ペースが速く、生死に関わる決断に対して重い責任を負わされることを考えると、慢性ストレスにさらされている状態のモデルとみなすことができる。

 研究チームは、勤務時間中と非番時に採取した血液サンプルと、ストレスの認識に関するアンケートの結果を比較調査して、ストレスと免疫系との間の関連性を発見した。

 特に研究チームは、ストレスが骨髄系幹細胞を活性化し、これによって白血球の過剰生成が誘発されることに気が付いた。

 傷の治癒や感染症との闘いには不可欠の白血球は、自身の宿主の体に害を及ぼす場合があり、隆起(プラーク)の蓄積が原因で動脈壁が肥厚するアテローム性動脈硬化症のような病気の患者には破滅的な結果を招く恐れがある。

 研究チームは次に、すし詰め状態にしたり、かごを傾けたりなどの方法で、マウスにとってのストレスに相当する状況にマウスを置く実験を行った。

 この実験では、アテローム性動脈硬化症を発症しやすいマウスを選んで用いた。

 その結果、ストレスが原因で生成された過剰な白血球が動脈の内側に蓄積して、プラークの成長を促すことが分かった。

 ナフレンドルフ氏は「ここでは、それらの白血球は結合組織を軟化させる酵素を放出し、プラークの崩壊を引き起こす」と説明する。「これは心筋梗塞(心臓発作)や脳卒中の典型的な原因だ」

 白血球は全体像の一部にすぎず、高コレステロール、高血圧、喫煙、遺伝形質などの要因も、心臓発作や脳卒中のリスクに影響すると同氏は付け加えた。

 同氏はAFPの取材に「これらはストレスに後押しされて瀬戸際を越えてしまうのかもしれない」と語った。(c)AFP