【6月20日 AFP】インドの新会社法で取締役に最低1人、女性を選任することが企業に義務付けられたことを受け、インドの大富豪で実業家のムケシュ・アンバニ(Mukesh Ambani)氏は妻を「抜擢」することに決めた。

 27階建ての豪邸で知られるこの夫婦の妻、ニタ・アンバニ(Nita Ambani)さんは25日に夫が会長を務めるインドの複合企業リライアンス・インダストリーズ(Reliance Industries)の取締役に選出される予定だ。同社は女性の取締役を外部の人材ではなく、親族から起用することを選択している企業の一つだ。

 2013年に成立した新会社法は、女性がほとんどいないインドの上場企業の取締役会に最低1人の女性を置くことを義務付け、ジェンダーの多様性を高めることなどを狙っている。アナリストたちは、職場での女性の地位が低いインドでは見えない昇進の壁、いわゆる「ガラスの天井」を打ち破る外部の人材がいない状態は当然だと話す。

 ムンバイ(Mumbai)を拠点とするコンサルティング企業プロフェッショナル(Professionele Consulting)のマハーラクシュミー社長は「当社はここ10年間、ヘッドハンティング業務を行っているが、女性取締役を外部から引き抜こうとする企業には出会ったことがない」と話した。企業は自分たちの思い通りに動き、取締役会の和を乱さない人物を探すものだという。

 12年12月に首都ニューデリー(New Delhi)で起きた、女子学生に対する集団性的暴行・殺人事件をきっかけに、インドでの性的虐待や男女間の不平等に対する怒りが広まり、インド社会における女性の処遇は国際社会から注視されている。

 ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)新首相は女性閣僚の数を前政権より大幅に多い全体の4分の1超まで増やしたが、インドの企業では平等に向けた道のりは長いといわれている。