仏でロマ人少年が暴行受け重体、根強い差別に怒りの声
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【6月18日 AFP】仏パリ(Paris)近郊で13日、劣悪な環境のキャンプに暮らすロマ人の少年(16)が激しい暴行を受けて重体になっていることが16日明らかになり、同国内に衝撃が広がっている。フランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領も、「言語道断で弁解の余地のない」蛮行と非難している。
事件が起こったのは首都北郊のピエールフィットシュルセーヌ(Pierrefitte-sur-Seine)。ダリウス(Darius)と呼ばれるこの少年は13日、ある公営団地の一室で窃盗を働いたと住民ら十数人に非難されて激しい暴行を受け、後にスーパーのカートの中で意識不明の状態で発見された。
事件が発覚したのは発生から3日たった16日で、人権団体や政治家らをはじめ、国民全体から怒りの声が上がっている。大統領府が出した声明でオランド氏は、「あらゆる手を尽くして襲撃の責任を負う人物らを見つけ出すよう」指示したと発表。マニュエル・バルス(Manuel Valls)首相も、暴行に及んだ者たちを強く非難した。
同市のミシェル・フルカド(Michel Fourcade)市長によると、この公営団地では窃盗被害が相次いでおり、それに関連して警察は今月、この被害少年に数回職務質問をしていた。それを受けて団地住民らがこのロマ人の一団に怒りの矛先を向けていたという。
■欧州全域に広がる差別意識
ロマ人は欧州全体で長く差別の対象となってきた。第2次世界大戦(World War II)中には、ナチス・ドイツ(Nazis)によって数十万人が殺害され、今もなお人権団体は欧州でロマ人に対する暴力行為が急増していると警告している。
フランスに居住する2万人のロマ人の多くが、仮設キャンプで極貧生活を強いられており、水道などの基本サービスすら使えずにいる。町外れの不法キャンプに暮らすロマ人の存在は同国で頻繁に議論の的となっており、軽犯罪の増加要因になっていると批判されることもある。(c)AFP/Marianne BARRIAUX