【6月18日 AFP】開催中のサッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)で、ある統計学的な理論の適用が試みられた──「誕生日のパラドクス(Birthday Paradox)」だ。W杯は、一見するとありえないような理論の正しさを証明する絶好のチャンスだという。

 W杯に出場している32チームのうち16チームに同じ誕生日を持つ選手たちがいる。ただの偶然と思われるかもしれないが、数学者にとっては、驚くほどの珍しい現象ではないという。

 以前から、統計学者たちは、いかなるグループでもメンバーが23人いれば、うち2人の誕生日が同じ日である確率は50%を少し超えるぐらいだと知っていた。

 一般的な感覚では、理論的ではないようにも思えるが、これにはきちんとした裏付けがあるという。そしてそれぞれ23選手を抱えた32チームが出場する今回のW杯では、この理論が見事に当てはまる。

 日本を拠点に活動するハンガリー人の数学者ピーター・フランクル(Peter Frankl)氏はAFPの取材に対し、「信じられそうにないことかもしれないが、数学では直感に反する理論を日々扱っている」と説明。「株取引で億万長者を目指したり、未来を予測しようと試みたりする場合でも、確率論を持ち出すことになる」とした。

 今回のW杯では開催国のブラジルや前回優勝国のスペインなど、全出場国の半分にあたる16チームで、同じ誕生日をもつ選手が少なくとも1組存在し、アルゼンチン、フランス、韓国、スイス、イランには2組存在する。フランクル氏によると、これは単なる偶然の一致などではないという。

「人々に納得してもらうのは難しいが、それでもほぼ全てのケースで当てはまる。数学的にみると、全32チームでそれぞれ23人の選手が出場している今回のケースでは、50%という確率は(理論的に)想定される数値よりも低い」(フランクル氏)

 フランクル氏は学校時代を思い返してみればいいと話す。クラスの中に自分と同じ誕生日の生徒がいた経験を持つ人が多いはずとしながら、30人のクラスでは、同じ誕生日の生徒が一組存在する可能性は70%、41人のクラスでは、同90%の確率になるという。