ユネスコ世界遺産登録会議始まる、古代インカの道などが候補
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【6月17日 AFP】 世界遺産の登録審査を行う国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産委員会が日本時間16日、中東カタールのドーハ(Doha)で始まった。
今回は南米6か国を貫く古代インカの道や、世界最古の壁画の一つで有名なフランスの洞窟など少なくとも30か所が、これまでに登録済みのユネスコの世界遺産981か所に加わる見込みだ。
今回候補の一つ、「カパック・ニャン(Qhapaq Nan)」はかつてインカ帝国が使っていた道路網で、アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルーを抜ける全長3万キロの壮大なトレイルだ。世界遺産になれば6か国すべてにとって恩恵となるだろう。
フランスから候補に挙がっているのは、南仏アルデシュ(Ardeche)県の石灰岩高原にあるショーベ洞窟(Chauvet Cave)だ。3万年以上前に描かれた壁画で知られる。
牛やマンモス、サイなど動物の絵が1000点以上描かれたこの洞窟は、約2万年前に落盤によって塞がれたままになっていたものが、1994年に発見された。洞窟のより深い場所で、さらに壁画が見つかることも期待されている。
いずれも世界遺産に登録されれば、保護のために資金援助や観光客の増加など、莫大な経済的恩恵を享受できる。
21か国の代表からなる世界遺産委員会は今回の会合で、危機に瀕している世界遺産について警告も発する予定だ。例えば、英ロンドン(London)では同市の高層ビル建築規制が甘いために、世界遺産のウェストミンスター宮殿(Westminster Palace、国会議事堂として使用)の景観が損なわれかねないと、懸念の声が上がっている。
有名な二つの世界遺産が危機にさらされているオーストラリアの問題も取り上げられるだろう。豊かな生物多様性を誇る世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)は保全がおろそかになっているために、ユネスコは世界遺産から「世界危機遺産」への格下げを検討している。気候変動の影響やサンゴを食べるオニヒトデの大発生に加え、農業排水や沿岸部における鉱山関連の乱開発のせいでサンゴ礁が破壊されつつある。
オーストラリアでもう一つ、危機に瀕している世界遺産は、タスマニア島の約20%を覆う140万ヘクタールのタスマニア原生地域(Tasmanian Wilderness)だ。森林伐採を後押しするトニー・アボット(Tony Abbott)豪首相はユネスコに対し、7万4000ヘクタール分を世界遺産から外すように要請した。しかしドーハの会合でこの要請は却下される可能性がある。(c)AFP/Victoria Baux in Doha, Indalecio Alvarez in Paris