【6月15日 AFP】サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)開幕戦を観戦に訪れた元アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)氏が、自身の座席を探す途中で道に迷い、ブラジルサポーターの群衆の中から救出される珍事が起きた。

 現地紙フォリャ・ジ・サンパウロ(Folha de Sao Paulo)は、12日にアレーナ・デ・サンパウロ(Arena de Sao Paulo)で行われたブラジル対クロアチアの開幕戦で、マラドーナ氏が進路を見失い、アルゼンチンの宿命のライバルを応援するブラジルの観衆に取り囲まれたと報じた。

 マラドーナ氏は、同スタジアムの屋根骨を組み立てた建設会社の社員に、観衆の中から救い出されたと同紙は伝えている。

 VIP席に誘導されたマラドーナ氏は、そこで地元の人々と並んで座った。

 1986年のW杯メキシコ大会で優勝を経験したマラドーナ氏は、どちらを応援しているのかと聞かれると、「もちろんブラジルさ!」と答えている。

 しかし、開催国ブラジルのオウンゴールでクロアチアが先制すると、VIP席にいたブラジル人は次々とその場から立ち去ったという。

 フォリャ紙は、その中の1人が「みんな、彼は疫病神だ。私は席を移る」と発言したとしている。

 その言葉通り、マラドーナ氏はブラジルのゴールに拍手を送ったものの、「それほどうれしそうではなかった」と同紙は状況を述べた。

 マラドーナ氏は前半終了後、ブラジルのプレーを批評しており、「ブラジルは良くなかった」とすると、「守備陣がいまひとつだ。攻撃は良かった。ボールをネイマール(Neymar da Silva Santos Junior)に集めていたからね。その点では良かった」と発言している。

 ブラジルのジルマ・ルセフ(Dilma Rousseff)大統領に対して、一部のファンが試合前に浴びせた下品な言葉の意味を聞いたマラドーナ氏は、政治的問題にも言及したという。

 ルセフ大統領を含む、同地域での左派指導者への支持を頻繁に口にしているマラドーナ氏は、観衆のやじを「ばかばかしい」と切り捨てた。

 マラドーナ氏は、「恥ずべき行為だ」とこれを一蹴すると、「ブラジルの試合は二度とスタジアムで見ない。ホテルのテレビで見ることにするよ」と憤慨したという。

 フォリャ紙は、マラドーナ氏が試合終了まで10分を残し、その場にいた人々に別れを告げたとしている。

 その後マラドーナ氏は、緑と黄色の大観衆を避け、素早く会場を後にしている。(c)AFP